性格が悪い

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『すばらしき世界』を観た

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終盤、ある小道具によって状況を説明するという演出がよかった。並の監督なら直接的に描写しちゃうよね、あそこは。映画芸術だとああいう演出が鼻につくとか言われてまたワーストに入れられちゃいそうだけど。

予告はシリアス寄りに編集されてる気がするが、実はもうちょいコミカル。特に六角精児とのシーンではかなりウケてた。自分はそこも好きだけど車のピューってやつに笑いをこらえられなかった。

主人公の三上は予想よりさらに危ない人ではあったけど、どこかチャーミングで魅力がある。だから観ている人は「どうかうまく更生してほしいな」と思う。…と思わせておいてから突然彼の危ない側面を見せてくるので「本当にこの人は助けてあげるべき人なのかな」と、彼を取り巻く登場人物のように我々は戸惑ってしまうわけだ。

この物語において三上の次に重要な登場人物はもちろん津乃田なわけだが、彼はきっと三上に自分と通じるものを見ていたんだと思う。不器用で、長澤まさみが演じるディレクターみたいにうまく立ち回れない自分は三上と変わらないのではないか。しかし三上が自分と違うのは、良くも悪くも直情径行なところ。そんな三上に津乃田はあきれつつ、うらやましさも感じていたのでは。彼の三上への接し方が変わるあたりは描写不足な気もするので唐突に感じたりもするのだが。

しかし、やっぱり西川美和監督は意地悪な人だと思う。三上の先行きが明るくなってきたところで冷や水を浴びせるようなシーンをもってきて、我々がああいった場所(ネタバレになるので書かない)になんとなく想像する滅菌された空気を完璧に裏切ってみせる。そしてそのあとさらに観客を(いい意味で)あざむく。しかも2度も!

ラストについては「その終わり方だけはやめてね」と思うものをちゃんと回避してくれてよかった。だからといってこの映画の終わり方に意外性があったわけではなかったけど、冒頭に書いた演出がやっぱりよかったな。思いつきそうで思いつかないよ、あれ。

タイトルの『すばらしき世界』にはほんのり皮肉も込められてるんだと思う。でもラストカットに映る空は、社会から見れば清濁の“濁”とされてしまう三上のような存在を否定も肯定もせず、ただ静かに広がっている。英題の『Under the Open Sky(この広い空の下で)』っていうのはいいタイトルだなと思う。

森達也の著書の「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」というタイトルをなんとなく思い出した。我々の住む世界はいかようにも見えるし、いかようにも変わる。三上はそれまで自分が見ていたものとは違う世界を最後に見出したんではないだろうか。


映画『すばらしき世界』本予告 2021年2月11日(木・祝)公開