性格が悪い

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『ブルータル・ジャスティス』を観た - ゆるふわだけど人はしっかり死ぬ

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この映画を観たのは、アフター6ジャンクションで紹介されてたから。たぶん同じ理由で本作を観に映画館に行った人多いと思うけど。

www.tbsradio.jp

↑のトークを聞けば、このブログを読む必要はないけど、気が向いた人は読んでね。

S・クレイグ・ザラーという、クセの強そうな、でも面白い映画を撮る人がいるということは知っていた。で、過去に撮った2本、『トマホーク ガンマンvs食人族』『デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-』がそれぞれU-NEXTとNetflixで配信されてたから観たんだけど、これがどっちも面白い。

邦題がすごくダメ映画な雰囲気出しちゃってるけど、実際に観たら全然印象が違う。すごいのは、いわゆるウェルメイドな映画ではないんだけど、同時にただのB級映画でもないっていう独特なバランス感覚。すごく変でクセが強いんだけど、これは作家性だからいいんだよ、こまけえことは、と強弁したくなってしまう才能だと思う。

そのクセっていうのが何かというと、雑に3つ挙げるならほとんどスプラッターな暴力描写、長い上映時間、随所に出てくる“弛緩”した会話。例えば『トマホーク』でのリチャード・ジェンキンス演じる保安官補佐官のゆるふわトークとか、『デンジャラス・プリズン』の最後の嫁とあいつのあの会話とか、今回の『ブルータル・ジャスティス』でいうならメル・ギブソンヴィンス・ヴォーンのやりとり。

今作の場合特に、メインの筋書きは確実に緊張感があるのに、登場人物たちがものすごい勢いでゆるい。だって「金に困った刑事コンビが悪党から金を奪おうとするんだけど思わぬ事態に陥っちゃう」っていうよくある筋書き、普通はどんどん刑事が追い込まれてうわーってなるでしょ? 確かに「うわー」とはなってるんだけどさ、なんか他人事みたいなんだよね。「けっこうヤバそうなことに手出しちゃうけどお前も加わる?」「うーんちょっと保留」みたいなところから始まるから。「うわー」っていうか「うわぁ〜(棒)」みたいな印象。ポスターの「正義を棄てた日 男たちの運命が交錯する」っていうコピーさ、間違ってはないけどなんか違くね?って思うのは自分だけかな。

笑えるところはいくつかあるけど、例えばメル・ギブソン演じる刑事がなんでもかんでも確率にして「%だな」と言い切っちゃうところ。刑事コンビのやりとりが漫才みたい。ヴィンス・ヴォーン演じる相棒も有能なんだか間抜けなんだかよくわからないし、彼の物語でいえば、あんな修羅場にいるのに前半で張られた伏線がゆるふわに回収されていくのともすごい。いや大事なことなんだけど、それどころじゃない…いや大事なことだよな…って困惑してしまう。

今回はたぶんザラー最長の2時間39分という上映時間なんだけど、↑に書いたヴィンス・ヴォーンのくだりも含めて「これ普通は切るよね?」というシーンがいくつもある。でも切ってしまったらザラーの作家性は失われてしまうというのも確か。かといってこれをほかの誰かが安易に真似してもうまくいくわきゃない

ていうか2時間15分ぐらいかなと思ってたから、さっき時間確認して「体感より24分もなげーよ!」と驚いた。まともな感覚でカットしたら1時間48分ぐらいに縮まるはずだ。これは褒め言葉なんだけど、この監督はあらゆる意味でキチガイだと思う。キチガイだからプロデューサーとか映画会社も「ダメだこいつは…あかんやつや」と説得をあきらめるのかもしれないな。

『デンジャラス・プリズン』でも思ったけど、主人公が妙に無表情で感情をあまり表に出さないところ、突発的で冷徹な暴力描写、前述したようにヤバい話なのに随所に弛緩したシーンがあるっていう意味で、個人的には北野武の初期を連想する。『その男、凶暴につき』で犯人を追いかけてた刑事が疲れて歩いちゃうところとか。『デンジャラス・プリズン』の主人公とか、奥さんと子供を救うっていうモチベーションは確かにあるんだけど、どこか感情が消えてるんだもの。

まあ宇多丸氏も言ってるように人を選ぶ映画なのは間違いないけど、こんな面白い作品が東京ではバルト9でしかかかってないっていうのがもったいない(そのせいか土曜昼の回でほぼ満席だった)。撮影も音響もすごいのでこれは映画館で観るべき映画ですよ。あと10月2日には池袋の新文芸坐で『トマホーク』上映するので、気になる人は観に行ってみたらいいんじゃないかな。

それにしてもトーマス・クレッチマンがあんな役で出てるなんてね。エンドクレジット観るまで気づかんかったよ。

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