性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『若おかみは小学生!』について

www.waka-okami.jp

全然ノーマークだったんですよ、この映画。存在自体は知っていたんですけど、「文部科学省認定」とか「少年向き」「家庭向き」とあって、絵もかわいらしいし自分がわざわざ観るもんじゃないなと。

なんですが、Twitterで「面白いのにあんまり長く上映されないみたい」という声をちらほら見まして、じゃあ観てみるかと思い行ってみました。

結果、ナメてました!すみません!どエライ傑作でした!

原作は令丈ヒロ子さんという方が書かれている児童文学で、全20巻。未読なんですけど、劇場アニメがあまりにも面白かったので読んでみようかと思ってるぐらいです。

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

 

さらにテレビアニメ版も作られていたようで、これは9月23日に完結していた模様。

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スタッフが微妙に違うようです。もしかしたら作画も違う?

で、この『若おかみは小学生!』がどういう話なのかというとですね、事故で両親を亡くした小学生“おっこ”こと関織子が、祖母が営む田舎の旅館で若女将として奮闘するというものです。このあらすじを読んで「花咲くいろは」を連想する人は多いと思います。僕もそうでしたが、実は『若おかみは小学生!』は2003年から刊行されているので、こちらのほうが早いんですね。ちなみに「花咲くいろは」も面白い作品だったので、オススメです。

さて映画『若おかみは小学生!』ですが、もしかしたら両親の死は直接的には描かないのかなと思っていたんですよね。おっこが両親と暮らした家を出るときに、遺影を持って出るとかそういうさりげない説明かなーと。でもそんなことはなくて、ここでは詳しく書きませんが結構リアルに怖い事故描写が出てきます。さすがに死体を写したり流血描写こそありませんけど、なんていうかYouTube時代の今ならこういう動画が普通に転がってそう、と思うような妙なリアルさがある。ここでもう「あ、これはぬるい話じゃないぞ」と心をつかまれました。

といってもストーリーのほとんどはほのぼのしたトーンで進みます。特に、ウリ坊という幽霊の少年に促されておっこが若女将になることを宣言する(言わされる)シーンは、戸惑う彼女の取るポーズがいちいちかわいらしい。ライバル旅館の跡取り娘である真月という女の子との言い争いも見ていて楽しいです。

ところが、映画の中には唐突に死んだはずのおっこの両親が顔を出します。最初は夢だということがはっきりわかる演出になっているのですが、次第にそれが現実味を帯びてくる。「これは夢ですよ」という区切りがあいまいになっていきます。そして、おっこの周囲には先述のウリ坊のほかにも幽霊が登場するし、旅館に泊まるイケメン少年の母もこの世を去ったという設定になっています。ネタバレになるので書きませんが、終盤にもある“死”に絡んだ家族が登場します。ほのぼのしたトーンで進むのに、この物語には常に死がつきまとっているんですね。

小学生にして両親が死ぬって、これはもう想像もできないほどのつらい境遇だと思いますが、おっこは基本的には明るく前向きな女の子です。ちょっと強情なところもあるけど、「お客さんのためを思って」健気に行動する小学生。こんな子いないだろと思ってしまっても不思議はないほどのまっとうなキャラクターなんですけど、不思議に彼女の存在には説得力がある。これは、脚本や演出はもちろんですが、おっこに声を当てている小林星蘭という人の力も大きいのではないでしょうか。現在中学生である彼女の声は子供と大人の過渡期にあると思うのですが、このどっちつかずな感じが、やはり子供から大人へと(それは両親の死という過酷な運命によってある意味強制されたものではあるのだけど)成長していく過程にあるおっこのキャラクターと非常にうまくマッチしているのではないかと。

多少の駆け足感はあるものの、長大な原作を1時間半にまとめ上げた脚本家・吉田玲子の手腕もさすがです。この人は山田尚子の大傑作『たまこラブストーリー』や『リズと青い鳥』は言わずもがな、たくさんのアニメを手がけている名脚本家ですけど、今回も見事というほかない仕事をされていますね。占い師の女の人とか唐突に出てきた感はありましたけど、しばらく見てるとすぐに違和感なくなりますし。

この日は『散り椿』『クレイジー・リッチ!』も観たんですが、ダントツでこの『若おかみは小学生!』が面白かったです。Twitter見てるとどうも上映期間が短くなっちゃうそうなんですが、すごくもったいない。観る前の僕みたいに先入観で決めつけてスルーしたくなる気持ちもわからないでもないですけど、「4回泣ける」とか謳ってる某実写映画(4回寝そうにはなった)より1那由多倍ぐらい泣ける名作だと思いましたよ。観る人がもう少し増えれば口コミでさらにお客さんも入りそうなんですけどね…。

映画『若おかみは小学生!』ストレートにメチャオススメです!

若おかみは小学生!  映画ノベライズ (講談社青い鳥文庫)

若おかみは小学生! 映画ノベライズ (講談社青い鳥文庫)