性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

「ワンダーウォール」について

www.nhk.or.jp

Twitter界隈で話題になっており、脚本家があの渡辺あやなので気になっていたドラマ。

ものっそい雑に説明すると、京都の今にも倒壊しそうな学生寮の存続を巡って大学と対立する学生たちの青春ドラマです。7月にNHK BSプレミアムで放送されたあと、反響に応える形で9月17日にNHK総合でオンエアされました。

渡辺あやといえば、個人的にはやっぱり『ジョゼと虎と魚たち』が印象深い(『カーネーション』は観てない)。

ジョゼと虎と魚たち [DVD]

ジョゼと虎と魚たち [DVD]

 

ぶっちゃけ、この映画の魅力の7割ぐらいは田辺聖子の短編小説を大胆に脚色した渡辺あやの力だと思ってます。

あと、テレビで放送されたあとに劇場公開された『その街のこども』も印象深いですね。この作品を観た数日後に東日本大震災が起きたっていうこともあって…。阪神大震災を高校生のときに体験して、それを扱った作品を観た直後に今度は東京であの長ーい揺れを体感して帰宅難民になったという。不思議な運命です。

その街のこども 劇場版 [DVD]

その街のこども 劇場版 [DVD]

 

で、「ワンダーウォール」なんですけど、なんて言ったらいいんだろう、決して「すごく面白い」というわけではないっていうか。観てるときも観終わったあとも、どう話せばいいのかって作品なんですよね。地味だから、民放とかでは企画が通らないドラマだと思う(テレ東ならわからないけど)。

これ、やっぱ当事者じゃないとちょっとわかりにくいとは思うんですよ。あのきったなくていろいろ不便そうな寮で実際に暮らしてみないと、学生たちの切実さみたいなものはやっぱりそこまで伝わってこない。でも、あの寮のモデルになった京大の吉田寮に住んでいたわけでもないのに、渡辺あやはこういうお話を作ってるんですね。

だから、ドラマを観てるときは「そうかー、この子らは必死に寮を守りたいんだな。それはわかる。でも、自分も守りたい!とまでは思わんなあ」というのが正直な感想で。しかも10回ぐらいに分けて放送するならだんだん愛着も湧いてきそうなもんですけど、単発の60分ドラマですからね。「なんか風情があるのはわかるけど、とにかくきったないなあ」というぐらいの感覚。登場人物たちも多くて誰が主人公なのかもはっきりしないし、それぞれのキャラを濃く描いてる時間もない。

でも、観終わってみると不思議な寂しさみたいなものが残る。なんだろうなー、この感覚、と思ってたんですけど、自分が若い頃、まだ関西にいたときの空気感みたいなものを思い出したんですよね。京都に住んでいたわけじゃないし大学にも行ってないけど、友達の車でいろんなところに行ってわーわー騒いでた頃のこと。追体験しようと思ったらできるだろうけど、やっぱり二度とはやってこないあの日々の空気感。『ジョゼ』でも『その街のこども』でも、渡辺あやが脚本を書いた作品っていうのはこういう、甘噛みみたいな爪痕(爪だから噛んでないんだけど)を残していくんですよ。ずっとそこにとどまっていてはいけないんだけど、どうにも甘美なノスタルジー

それから、渡辺あやは自分で演出まで手がけるわけではないのに、『ジョゼ』にも『その街のこども』にも、しっかりと関西の空気感のようなものが刻まれている。確か『ジョゼ』は実際には関東でロケしてるんですけど、なぜか“関西感”みたいなものが刻み込まれてるんですよね。しかもそれは、ほかの土地で育った人が想像するようなコテコテのいかにもな大阪感ではない。表面的な街並みは東京やほかの地方と同じ、でも何かが違うっていう、関西の独特な雰囲気。今回の「ワンダーウォール」にも、なんか懐かしいものを感じてしまいました。

このドラマを取り上げたあるコラムでも指摘されていましたが、「ワンダーウォール」には学生運動が盛んだった60年代後半の空気感も漂っています。スマホを手にした学生たちは間違いなく現代の若者なんだけど、寮の存続を巡って闘おうとする姿勢、そして権力を前にして絶望する姿は、学生運動を取り扱った映画で観てきたかつての若者たちとかぶります。そして、岡山天音演じる学生が手近なものを使って権力との闘いを説明するシーンには、いつからか社会の構造が複雑化し、何か1つの壁を壊せば未来が開けるはずだと無垢に信じていた人々の挫折と失望を重ねて見ることもできる気がします。あと、単純に学生たちのもっさい見た目がなんか60年代ぽい気もするですよね。そのへんは意図的にそう演出したのかもしれない。

と、思いついたことをぴっぴっと書いてきたので、何が言いたいのかよくわからなくなってきましたけど、言いたいことは、渡辺あやっていう脚本家がやっぱりすごい人で、彼女の書いた物語がもっと観たいっていうことなんですよね。

news.mynavi.jp