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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ラ・ラ・ランド』を観た

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gaga.ne.jp

※ちょいネタバレあり(結末までは書いてません)。

 皆さんお待ちかねの『ラ・ラ・ランド』でございます。

 アカデミー賞でも大本命と言われており、アメリカでも大ヒットしているミュージカル。監督は『セッション』の新鋭デイミアン・チャゼルです。いや“新鋭”なんて言葉を使うことには違和感がありますね。作品そのもののクオリティもそうですが、いたるところに散りばめられた名作へのオマージュや、本作の音楽のベースとなっているのがジャズであることとか。はっきりいってこの人が歳下って、信じられません。

 どういうお話なのかというと、女優を目指してロサンゼルスにやってきたミアと、自分の店を持つことが夢のジャズピアニスト、セバスチャン(映画の中では通称“セブ”)のラブストーリー……と言い切ってしまうとちょっと違和感があるかも。もちろん恋に落ちる2人の物語でもあるのですが、同時に、夢追い人たちのお話でもあるのです。そういう意味では、デイミアンの前作『セッション』にも通じますね。

 デイミアンはもともと『ラ・ラ・ランド』のストーリーを2010年にはほぼ書いていたそうです。そして当時ハーヴァード大でのクラスメイトだったジャスティン・ハーウィッツ(『セッション』、そして本作でも音楽を担当)と一緒にアイデアを練っていたそう。しかしジャズをベースにしたミュージカルという設定にスタジオ側は難色を示し、セブをジャズピアニストではなくロックミュージシャンにしろとか言っていたそうです。さらにストーリーの結末も変えろとまで言われた監督は一度『ラ・ラ・ランド』を白紙に。その後脚本を書いた『セッション』が興行的にも批評的にも成功したせいかプロデューサーも決まり、本来の構想をもとに『ラ・ラ・ランド』に取り掛かったわけです。

 当初は『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で有名なエマ・ワトソンがミア、『セッション』で主役を務めたマイルズ・テラーがセブを演じる予定でした。しかしエマは『美女と野獣』に集中するため降板。マイルズも契約交渉が長引いてしまいます。そして結果的にミアはエマ・ストーン、セブはライアン・ゴズリングが演じることになりました。

 エマのキャスティングの決め手は、彼女が出ていたブロードウェイの「キャバレー」をデイミアンとジャスティンが観に行ったことが決め手だったようです。ちなみにミアは大学を中退して女優になるためLAに出てきたという設定ですが、エマ自身も15歳のときに母親と一緒にLAにやってきました。映画の中で、ミアがオーディションでさんざんな目に遭う場面が出てきますが、これはエマやライアンの実体験をもとにしたものだそうです。例えば、ミアが演技をしているのに、キャスティングディレクターが携帯電話で話をするシーンは、ライアンの経験がもとになっているそうです。

 この映画は、元はジャズドラマーで、映画の世界を夢見るも手がとどかないかもしれないと思っていたかつてのデイミアン、そしてエマやライアン自身の過去の葛藤をも反映したものになっています。アカデミー賞会員は映画業界人で構成されていますから、この物語に感情移入しないわけがない。『ムーンライト』もとてもいい映画のようですが、『ラ・ラ・ランド』の共感性はあざとさすら感じるほどに強力だと思います。

 かといってこの映画が一般の人たちには受けないのかというとそういうわけでもないんですよね。夢を現在進行系で追いかけている人たちに勇気を与えるのと同時に、夢を諦めて今は平和に暮らしている人たちの心をも打つ物語になっている。そしてまさに夢のような美しい映像を見せる一方で、現実も見せつけてくる。ストーリーはシンプルですが、さじ加減が本当に絶妙。「夢を追ってLAに出てきたわりにはこいつらあまり金に苦労してないな」と思ったりはしますが。

 出会いは最悪だった2人が惹かれ合っていくという王道的な展開、そしてミアとセブがプラネタリウムで宙に浮く(恋をしたことがある人なら誰でも感じたことのあるような高揚感を感じられます)という、一歩間違えればチープになってしまうような演出がいちいち感動的なのは、やはり撮影と音楽が素晴らしいからでしょう。サントラはApple Musicに出てから、ほぼ毎日聴いています。本当にどの曲も最高です。逆に、この音楽が気に入らなければ『ラ・ラ・ランド』はあまり楽しめないでしょう。なんといったってこれはミュージカルですから。

 正直に言って、エマもライアンもダンスはそれほどうまくないし、歌も微妙(特にライアン)です。本当にブロードウェイでがっつりやっているような人たちとは比べるまでもないでしょう。でもこの映画はそれでいいんですよね。だって、夢を追ってるけどうまくいかない人たちの話なんだから。彼らの不器用さ、そしてそれでも一心不乱に夢を追うひたむきさが、“中の人”であるエマとライアンにも重なってくるのです。

 技術的なところに話を戻すと、撮影は全編フィルムで行われています。オープニングの群舞シーンはさすがにワンカットではなく、いくつかのカットをシームレスに見えるようにつないでいます。ミアとセブが踊るシーンは2日間で8テイクかけて撮ったそう。テイク数はそれほど多くないものの、日暮れ時の“マジックアワー”のうちに撮りきらないといけなかったので、緊張感が半端なかったんじゃないでしょうか。むしろ2日でよく撮れたなという感じ。

 ↓はプリプロ段階で、オープニングの群舞シーンをシミュレートしたときの映像。iPhoneで撮られているようです。左下のが本編映像ですね。

 全体的な映像のトーンはミュージカルの名作として名高い『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』にインスパイアされてるそうです。そして、クライマックスのあるシーンでは『雨に唄えば』『バンドワゴン』などへのオマージュをこれでもかとぶち込んできます。このあたりもアカデミー会員、ひいては映画ファンの心を打つところですね。考えようによってはあざといと思いますが。↓は本作と元ネタを左右二分割にして見せる動画。

 ストーリーに視点を戻すと、この映画、ライアンのほうが先にクレジットされてますが、実質的にはエマが演じたミアが主人公だと思います。あまり細かくは書きませんが、このあたりに時代を感じるものがあって面白いですね。結果的に、ミアをワトソンではなくストーンのほうのエマが演じたのは正解だったと思います。ストーンのほうのエマって、なんか不器用そうじゃないですか(勝手なイメージだけど)。だがそれがいい。今後どんな女優になっていくのか楽しみです。

 さて、だらだらと書いてしまいましたが、つまるところ僕が言いたいのはこの映画が大好きだということ。この文章を読んで観に行って「つまんなかった」と思ったら申し訳ないですけど、でも俺は大好きなんだよこの映画が!クソッタレが!!!