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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『沈黙‐サイレンス‐』を観た

外国映画

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chinmoku.jp

17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教(信仰を捨てる事)したとされる高名な宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン)を追い、弟子のロドリゴアンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は日本人キチジロー(窪塚洋介)の手引きでマカオから長崎へと潜入する。
日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、その中で弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。頑ななロドリゴに対し、長崎奉行の井上筑後守(イッセー尾形)は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。そして次々と犠牲になる人々――。
守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは。(公式サイトより)

 長いです。2時間41分もありますからね。座り心地のいい映画感で観ることをおすすめします。

 原作は遠藤周作の小説です。僕は『海と毒薬』だけ読んだことがあったんですが、簡単に印象を書くと「重いテーマを読みやすい文体で、でも大事な部分は失わず書ききる人」という感じ。今回マーティン・スコセッシが念願の映画化を果たしたということで『沈黙』も読んでみましたが、『海と毒薬』を読んだときと印象は変わりませんでした。てか、普通におもしれーから遠藤周作

 2時間41分もあるだけあって、映画は原作にある要素をほぼ取り込めているのではないかと思います。窪塚洋介がキチジローを演じるというのは少し意外だったんですが、観てみるとこれが違和感全然なし。最初は、モキチ役の塚本晋也さんがキチジローってイメージだったんですが、映画を観たら「これでよかったんだな」と思いました。

 長崎が舞台という設定でありながら、撮影はほとんど台湾で行われているそうです。そのせいか?なんだかロケ地の植物とかがあんまり日本ぽくないなと思ったりもしたんですが、ほぼ違和感ありません。てか、アメリカ人が日本を舞台にした映画作るとありがちな変なところも全然なかったかも。クリント・イーストウッドの『硫黄島からの手紙』でさえ玄関がいきなり障子っていう間違いがありましたからね。

 映画を観ていてまず思うのは、スコセッシの映画ってやたら音楽がかかってるイメージなのに、今作についてはほぼ無音なこと。『沈黙』だからなんでしょうか、あまりに重い物語だからなんでしょうか。個人的にはスコセッシの映画は音楽かけすぎ!と思ってたので、これぐらいがいい。悲しいシーンで悲壮な曲が流れたりしません。とにかく音がなくて、全編重苦しい雰囲気です。まさかそんなバカはいないと思いますが、お互いのことを知らないカップルがデートで観に行くにはまったく向いていません。一人で観に行きましょう。

 ハリウッドスターが出ているためか、「アンドリュー・ガーフィールド、お前そこでウェブシューターでなんとかしろよ」とか「リーアム・ニーソン『96時間』だったらこんな奴ら瞬殺やん』とか「アダム・ドライバー、フォース使えよフォース」とかつい思ってしまったんですけど、もちろんこの映画にはウェブシューターもフォースも出てきません。彼らは一貫して“信じる者”という弱者です。

 小説を読んだときにも思ったんですけど、「神様なんかどうせ助けてくれない(てかいねーだろ)のになんでそんなに信じるん?」ひいては「他者のための行為、信念が結果的に他者を傷つけるということについてあなたはどう思うの?」という問いかけを感じるんですよね。後者はキリスト教に限ったことじゃないですよね。最近観た映画だと『アイ・イン・ザ・スカイ』なんかもこういうお話で。

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 いやもっと難しいことなのかもしれないけど僕の頭ではこの程度の理解しかできないのでまあ許してつかあさい。

 そして、小説では「どうなんでしょうね」という問いかけで終わっていたものに、この映画では1つの回答が出されてると思うんですよ。ネタバレなんで言いませんけどね。基本的に原作に忠実だけど、あそこで、このお話を映画化したいと30年近く考えていたスコセッシ個人の“答え”が出る。その答えについてあーだこーだいうとネタバレなんで書きませんが、僕はちょっと感動してしまいました。

 日本人キャストでいうと、通辞を演じた浅野忠信の迫力がすごかったですね。『淵に立つ』でも怖かったですけど、今回も怖いですよ。基本的に浅野さんって「なんかこわそう→あ、いい人→やっぱこええ!」っていう雰囲気なんです。特に彼がロドリゴに迫る(性的な意味ではない)シーンの演技は迫力があるので必見。それからやっぱり塚本晋也さんですかね。『野火』であんなことになって今回もまあ壮絶な役どころで…ドMとしか思えません。ちなみにSABUが出て来るところはちょっと笑いました。唯一気が抜けるところかも。

 実は個人的にスコセッシってそんなに好きな監督ではなくて、『タクシードライバー』も『グッドフェローズ』も『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』も「まあいいんじゃない」って感じだったんですよね。でも今回の、スコセッシ“らしくない”映画『沈黙-サイレンス-』はもしかしたら彼の映画の中で一番好きかも。一般受けするかというと微妙な気はしますが。とにかく観に行く場合はあんまり水分をとりすぎないようにして映画館へ向かうことをすすめます。