ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ネオン・デーモン』を観た

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gaga.ne.jp

誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた16歳のジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるために、田舎町からロスへと やって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心をとらえるジェシーに、激しい嫉妬を抱くライバルたち。ジェシーに仕事を奪われた彼女たちは、常軌を逸した復讐を仕掛け始める。だが、ジェシーの中に眠る壮大な野心もまた、永遠の美のためなら悪魔に魂も売り渡すファッション業界の邪悪な力に染まっていく。(公式サイトより)

 TOHOシネマズ新宿で鑑賞。音がでかくてよかったです。川崎のチネチッタのLIVE ZOUNDも良さそうだから試してみたい。

 ↑にあらすじを引用しましたけど、中盤あたりからぶっちゃけストーリーの整合性とか意味とかどうでもよくなります

 ニコラス・ウィンディング・レフン監督の前作『オンリー・ゴッド』を観てる人ならそこまで驚かないと思います。でも『ドライヴ』だけのイメージで観に行ったら面食らうでしょうね。僕はすでに『オンリー・ゴッド』のカラオケシーンで面食らっていたので、免疫ができていました。ちなみに同作は僕の2014年ベスト10の10位です。

 レフン監督の作品の中ではむしろ『ドライヴ』が異色で、『オンリー・ゴッド』や『ネオン・デーモン』がまさに彼の真骨頂かと。カンヌでも評価が真っ二つに分かれたそうですし、海外でもあまりお客は入ってないようです。確かに、彼の映画は人を選びます。万人受けする作風ではないでしょう。僕の周りでは僕自身を含め好きな人がけっこういるんですけど。みんな変態、あるいはキ○ガイなんですかね。

 ただ、レフン作品を観たことがない、あるいは『ドライヴ』しか観たことがないという人には『ネオン・デーモン』を観てほしいです。ゴア描写は『オンリー・ゴッド』ほどではないし、今回はカラオケもありません(意味がわからない人は『オンリー・ゴッド』観てね)。それで、合わなかったならもう金輪際観なければいいし、好きなら今後もレフン監督に注目してみてはどうでしょう。

 『ネオン・デーモン』は、レフン監督がある朝目覚めたときに自分の嫁はんの顔を見て「なんて美しいんだ。それなのに俺ときたら…」と嫉妬の念に駆られたことがきっかけだそうです。なんだ、ノロケかよ。でも彼の言ってることはわからないでもないですね。僕も「あぁ、美少女っていいな。美少女に生まれ変わってみたいな」と思ったことがありますし。それに、レフン監督は「男というものは誰しも、自分の中に10代の女の子を宿しているものなんだ」とも言っていて、これもまあなんとなくわかる。でもこの映画の中では、そんな憧れや崇拝の対象でもある美少女たちのどす黒い一面ががっつりと切り取られていきます。

 そもそもねえ、エル・ファニング演じる主人公のジェシーが「私は可愛いからそれで一旗あげようと思った」って堂々と言うんですよ(字幕うろ覚え)。クリスティナ・ヘンドリックス(『ドライヴ』で頭ぶっ飛ばされてた人。ムチムチ)演じるモデル事務所の社長?の前ではなんか自信なさげなんだけど、ちょっと童貞っぽいフォトグラファー志望の男の子には「私は可愛いから」とか堂々と言うんですよね。向こうではこれが普通なんかな?とも思ったんですけども、この時点でこいつただのウブなねーちゃんじゃねえなと。というかそもそも「デルモ(死語)になって一旗あげる」って、16歳でLAに出てくる時点でもう相当なタマですよこれは。

 エル・ファニングはあんまりスーパーモデルって顔つきじゃないんですけど、あえて彼女を選んだのは、劇中にも出てきますけど人工的な美貌ばかりが追求される現状へのアンチなのかもしれませんね。でもねえ、ファッションデザイナーのおっさんがジェシーを見たときだけ顔が「はぁっ!」ていう感じで変わるところはちょっとわかりやすすぎで笑いそうになりましたよ。わざとやってんのかなってぐらい。「ダイヤの原石見つけたで」っていう、モロな顔ですからね。

 ジェシーが泊まってるモーテルの管理人?をキアヌ・リーヴスが演じてるんですけど、こいつがもうドのつく嫌なやつで最悪、いや最高でした。そしてジェシーがこのモーテルで“あるもの”を目撃するところから、この映画のキ○ガイぶりは加速していきます。『オンリー・ゴッド』もそうだったけど、現実と悪夢の境目が曖昧になっていくというか、映画全体のおとぎ話感が増していく。“あるもの”はジェシーの内面を具現化したものなのかもしれません。

 で、ジェシーは、『マッドマックス:怒りのデス・ロード』にも出てたアビー・リー演じるサラを蹴落としてランウェイを歩くことになります。ここでエル・ファニングが見せるびみょ〜〜〜〜〜なドヤ顔。これがいいですね。ほんと、やりすぎない絶妙なドヤ顔なんですよ。しかしその後、予告編にも出てきますが、仕事取られて激おこなサラがトイレの鏡をぶっ壊し、結果的にその破片でジェシーは手を切ってしまいます。つかここ、観たときはサラにやられたのかと思ったけど。

 ちなみに鏡はこの作品の中でものすごく多く出てきます。あまりにも鏡が多く出てくるので、途中からこの物語は鏡の向こう側で起きている幻想なんじゃないかと思ってしまうぐらい。ジェシーたちはモデルですから、鏡と向かい合うことが多いわけですよね。でも人間って、そんなふうに自分の姿をずっと見つめ続けているといつしかおかしくなってしまうんじゃないでしょうか。美しくても醜くても、人っていうのはあまり自分自身というものを視覚的に認識しすぎないほうがいいんじゃないかと思うんですよ。今思いついたんですけどね、適当に。たまに、鏡とか写真を見ていると「あぁ、自分ってこんな顔してるのか。不思議だな」と思うことはありませんか? たまに見るぐらいだったら「不思議だな」で済むものも、あまり行き過ぎると狂ってしまうんじゃないか、僕はそう感じてしまうんですよね。

 映画の後半では『ネクロマンティック』的な展開もありますしカニバリズムも出てくるわで、もう変態にとってはいたれりつくせりみたいな状況になってくるんですけど、撮影は全体的にとても美しいです。レフンが色盲であることにも起因するヴィヴィッドな色調。『ドライヴ』『オンリー・ゴッド』でもそうですけど、今回もすごいです。でも今回は、スタジオでジェシーが初めて撮ってもらうシーンで、真っ白なバックも登場するんですよね。ここはちょっと新鮮でした。ヴィヴィッドなシーンについてはダリオ・アルジェントの『サスペリア』との類似を指摘する人もTwitterにいたりして、なるほどなと思いました。さっき観たんですけどね『サスペリア』。

 全然意味わからんわ、とか雰囲気映画、とけなす人がいるのもわからないではないんですけど、今回の作品も僕は好きです。正直に言えば、ラストはもっとイカれててもいいんじゃないかな、まだまだいけるんじゃないかと思わなかったこともないですが。観ようと思っている人に伝えたいことは、あんまり頭で理解しようとするなということ。ただ感じろ、ということです。僕は開始30分ぐらいで「物語のつじつまはどうでもいいや」と思いました。

 ちなみにレフンは今、日本を舞台にした映画の構想を練っているらしくて、あるヤクザの親分を暗殺することになった口の利けない男が主人公らしいです。タイトルは「The Avenging Silence」だそう。『オンリー・ゴッド』以降興収的にはコケてるので先行きが心配ですが、ぜひ実現させてほしいですね。