ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』を観た

eyesky.jp

※ネタバレなし

 TOHOシネマズシャンテで先行上映されているので観てきました。

 Rotten Tomatoesで現在95%と高スコアを維持しているこの作品の中心にあるのは、1人の少女を救って数十人を危険にさらすか、数十人を救うために1人の少女を犠牲にするかという極めて難しい問題。

 監督は南アフリカ出身のギャヴィン・フッドという人で、『ツォツィ』という映画で一躍脚光を浴びました。僕も観たんですけど内容はあんま覚えてないです。人の命なんか知ったこっちゃねーぜヒャッハーな少年が、赤ん坊を拾ったことで人間性に目覚めていく…っていう筋の作品で、けっこういい映画だったと思うんですけど。『ツォツィ』のあとはハリウッド大作に起用されてますが、あまりパッとしなかっただけに今回の『アイ・イン・ザ・スカイ』で面目躍如といったところでしょうか。

 主人公はヘレン・ミレンが演じるパウエル大佐ということになってますが、個人的には群像劇に見えました。というのも、このパウエルという人がある意味人間的に見えなかったからなんですね。彼女はずっと「もういいからさっさとテロリストぶっ飛ばそう!1人より数十人を助けるのが当たり前だべ?」とイライラしてるように見えるんですよ。

 アラン・リックマンが演じたベンソン中将はパウエルよりはもう少し冷静に見えますが、やっぱり「やむを得んな、テロリスト殺るべ」っていうテンション。そして、実際にドローンを動かして標的を攻撃する役目を負っているワッツ(アーロン・ポール)とその隣の新人の女の子は、ある意味標的と一番近いところにいる人たちだから気が気でない。

 この映画がいいなあと思ったのは、オープニングに例の女の子の無邪気な様子とその家族の生活を持ってきたところですね。観客はここで、人の命というものが「1人か数十人か」という単純な計算ではその重さをはかれないことを突きつけられてしまいます。

 だから、観ているとパウエルの「早く撃て」という態度にイライラさせられるし「このババアに人の心はないの?」とも思うんですが、確かにこの少女に被害が及ばないようにテロリストへの攻撃をやめると数十人が犠牲に遭うわけで、その人たちの命は少女の命より軽いのかとも考えさせられてしまう。

 観ていて思ったんですが、パウエルへの返事が「Yes, ma'am」か「Yes, Colonel」なのかで、部下たちの心情が表現されているような気がしました。前者では命令になんら疑問をいだいていないときで、後者では「わかったよやりますよ命令だし…」というテンションだったような。うろ覚えなので間違ってるかもしれませんけど。

 テロリストを攻撃するかしないかでいろんなところに判断を仰ぎまくるシーンは『シン・ゴジラ』の会議シーンを思い出しましたね。イギリス映画っぽいなあと思ったんですけど、中国で卓球に興じてたアメリカのお偉いさんが「攻撃? ああやれやれそんなん、状況的にオッケーだべ」みたいなかるーいノリだったのは皮肉ですかね。ちょっと笑いました。

 僕も含めて、観客の大部分はベンソンたちと一緒に会議をしていたアンジェラ(モニカ・ドラン)という人に感情移入するんじゃないでしょうか。観ていて「うんうん、その通り!」と僕なんかは思ってたんですけど、あるタイミングでベンソンが彼女に突きつけるセリフがすごく重いんですよね。そりゃなんにも言えなくなっちゃうよなあと…。

 しかしこの映画で気になるのは、パウエルという人の内面ですね。あえて見せないようにしているんでしょうけど、もちろんそれがこの映画の弱点になっているわけではなく、むしろ奥深さの原因になっている。軍服姿のヘレン・ミレンもなかなか新鮮で良かったです。

 人によっては「会議シーンが多くて退屈」とか思う方もいるかもしれませんが、僕はずっと集中して観ることができました。いざ撃つか撃たないかというところの緊張感はすごかったですよ。あとやっぱ役者がいい。特にヘレン・ミレンアラン・リックマン。それから、『キャプテン・フィリップス』で長渕剛ばりに暴れていたソマリア海賊役のバーカッド・アブディが、本作では米英の秘密工作員を演じてたのが面白かったですね。彼はドゥニ・ヴィルヌーヴの『ブレードランナー 2049』にも出演するということですが、個人的に気に入っている役者なのでもっと活躍の場が広がるといいなと思います。

 なんせ今上映されてるのはシャンテだけなんで、休日に行く場合はチケットをオンラインで早めに取っておいたほうがいいと思います。僕が行った初日なんてめちゃくちゃ人多かったですからね。とにかくこの年末オススメの一本です。

Eye in the Sky

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