ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『この世界の片隅に』を観た

konosekai.jp

 公開初日に109シネマズ川崎で観たのですが、10:05〜の回であるにもかかわらずほぼ満席でした。ぱっと見、年齢層は50代以上の人が多かったと思います。それにしても土曜日朝の回にこれほど人が入るとは、ちょっとした驚きです。上映終了後にはさらに新たな驚きがあったのですが(後述)。

 原作はこうの史代さんの同名マンガです。こうのさんといえば実写化もされた『夕凪の街 桜の国』の作者ですね。『夕凪』は原作を読んだのですが、『この世界の片隅に』はいつか読もうと思いながら忘れてしまっていた作品です。

 実は僕、出身者でもないのに(むしろ広島出身の人には「もう聞き飽きたし見飽きたから“ヒロシマもの”は一切受け付けない」という方もいる)広島絡みのお話には小さい頃から関心がありまして。「ギギギ」「しごうしちゃるけえのう」「おどりゃクソ森」「さよなら三角またきて四角(以下自粛)」でおなじみの(というと語弊があるか)『はだしのゲン』はもちろん、中沢啓治さんの『黒い雨にうたれて』というマンガも読んでましたし、図書館に置いてある(今もあるのかな)原爆投下直後の広島を捉えた写真集なんかも少年時代に見ていました。

 小学校の修学旅行で広島に行ったとき、被爆者の方の体験談を聞いたことがあります。泊まっていた施設の広間に集められた小学生たちが、最初は騒いでいたものの、話が進むにつれどんどんと引き込まれ、最終的には皆シーンと静まり返っていたのがすごく印象深いです。

 『この世界の片隅に』を観ていて気付くのは、これまで僕が観てきた広島ものとはちょっと違うというか、すでにいろんな方が話されていますが、「戦時中でも今と変わらず前向きに生きる人たちがちゃんといた」ということです(いや、ある意味では今のほうがみんな暗いかも)。考えてみたら当たり前のことなのですが、とかく悲劇性、残酷性、メッセージの強さばかりが際立ってしまいがちな広島ものの中では少し異色です。これは作者のこうのさんが直接的に原爆を体験していないからかもしれませんが、だからといって若い世代の浅はかな戦争観、原爆観のようなものを感じさせないバランス感覚がすごいと思います。

 例えば主人公のすずが絵を描いていて憲兵にとがめられるシーン。日本の戦争映画ではよくある場面ですが、そのあとの展開がちょっとユニーク。「おどりゃクソ憲兵」と握りしめた拳をゆるめたい気持ちになります。

 全3巻のマンガをぎゅっと圧縮してるせいかちょっと説明不足なところはあるし、かと思うと「それさっき見た」というシーンを説明的に繰り返したりとちょっと気になる部分もあるのですが、て退屈はしません。説明不足でも置いていかれるほどではなくて、「まあいいか」と思えてしまうぐらいのもの。

 いいところはいろいろあると思うんですが、すずを演じたのんの功績がでかいのは間違いないでしょう。予告編の時点ではちょっと不安があったんですが、本編を観るともう彼女以外のすずはありえないと思わされるほど。小野大輔潘めぐみなど声優が本業の人たちを相手にしてもまったく引けを取っていません。ぽわーっとしたすずの声と、真剣なすずの声、ばっちり演じ分けていて、特にシリアスなときの声にはドキリとさせられます。

 僕は『あまちゃん』すら観ていないんですけど、この人のポテンシャルは相当なものかもと思わされてしまいました。この映画のように的確に使えば本当に輝く人で、事務所のアレコレの問題は本当に残念です。

 それにしても原作を読んでなかったからというのもありますが、直接的にはほとんど原爆を描かないことにはちょっと驚きました。あの閃光だけで表現することが余計に不気味だし、その後のすずたちの生活がまったりと描かれるのにもびっくり。で、油断してると……という(とりあえず観てみてください)。一歩間違えれば散漫になってしまいそうな作りだと思いますが、上述したように本当に観てて飽きない映画です。

 そしてエンドロール。誰も席を立ちません。わかりやすくガーッと泣かせにくるようなシーンはないのだけど、客席になんともいえない空気が充満しているのがわかりました。そして客電が点いたとたん起きた拍手。

 この映画に、ちゃんとクラウドファンディングでお金が集まったということが喜ばしいです。惜しむらくは公開館数が少なく、地方では観られない人が多いということ。もう十二分にヒットした某映画とか回数減らして、こっちをかけましょうよ、ホント。
 

 

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

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この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

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この世界の片隅に 劇場アニメ絵コンテ集

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