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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『何者』を観た

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nanimono-movie.com

 『桐島、部活やめるってよ』の朝井リョウ直木賞受賞作品の映画化ですね。

 監督は、だいぶ前に書いたのにこの糞ブログの「よく読まれてる記事ランキング」のずっとトップを走ってる『愛の渦』の三浦大輔監督です。

 お約束ですが、三浦大輔といっても先日引退を発表したハマの番長のことではありません。劇団ポツドールの主宰者の三浦大輔さんですね。

 とりあえず言っておきたいのですが、僕は朝井リョウの小説が苦手です。『桐島、部活やめるってよ』の映画版はめちゃくちゃ好きなのですが、原作は何度読んでも途中でギブアップしてしまいました。その理由をまあ簡単かつ適当に説明すると、文体が死ぬほど苦手ということです。

 朝井リョウの文体ってそれほどクセなくない?と言われるとまあそうかな、と思うんですが、『何者』で例をあげるなら

ぷしゅう。

 っていう、缶ビールのプルトップを取る音を何度か繰り返すところがあるんですが、もうこれは完全に個人の好みといっていいと思いますけど、村上春樹の「やれやれ」を嫌う人がいるのと同じような意味で、僕は朝井リョウのこういうところ(どういうところだ)が大嫌いです。

 やっかいなのは、朝井リョウが描こうとしているものの大枠はとても自分好みだということですね。そうじゃなきゃ原作を一度も読み通せなかったとはいえ映画『桐島』をあれほど好きにはなれなかったし。

 で、今回の『何者』なんですが、無事原作を読み通すことができました。上述の「ぷしゅう。」とかホンマ腹立つわとか思いながらも最後まで読めたし、クライマックスはなかなかゾッとさせられたし、改めてこの人の描こうとするもの自体は好きなんだなと。

 そして映画なんですが、まず配役が絶妙ですよね。6人に実際に会ったことがあるわけじゃないからわかりませんが、特に二階堂ふみ意識高い系を演じるなんて、もうこれは製作側にいい意味での悪意すらあるんじゃないかと思うぐらいですよ。まあでも、岡田将生はちょっと役とは全然違うかな。いや、わからないんですけどね。岡田将生と知り合いじゃないし。

 さて、三浦監督の演出。実は僕、演劇出身の監督の映画は嫌いなものが多いんです。蜷川幸雄松尾スズキも本当に耐え難い。松尾さんの場合大人計画の舞台はとてもおもしろかったんですけど、映画の『恋の門』とかマジでつらかったです。開始10分でDVD止めましたもん。

 でも三浦監督の『恋の渦』は面白かったですし、今回の『何者』なんてまさに「ザ・演劇出身の監督らしい演出」がクライマックスでドーンって出てくるのに、とてもよかった。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』もよかったし、もうこうなったらそろそろポツドールの舞台も観に行くべきかなあと思ってるぐらいです。

 あと、原作にはいくつか読んでてゾッとするシーンがあるんですけど、映画ではさらにその怖さが増強されてるなと思うところがありました。たとえば佐藤健演じる拓人、岡田将生演じる隆良、山田孝之演じるサワ先輩が喫煙所?かどっかで会話するシーン。原作読んでたときは「あぁ、ちょっと気まずいな」ぐらいのもんだったこの場面、映画ではさらにいたたまれないというか一触即発ムードが漂ってて怖かったです。

 それから、二階堂ふみが演じる理香がグループディスカッションでべらべら喋るシーン。ここは原作よりもさらに笑える雰囲気に仕上がっていて、理香の「私が私が」感というか「ここにいる奴ら全員のマウント取ったらあ」みたいないやーな感じが見事に出ていて最高でしたね。

 ただし「ここはどうなの」と思う部分もあります。ひとつは、有村架純が演じている瑞月が隆良にズバッと物を言うシーン。原作では隆良が瑞月に偉そうに講釈を垂れるところが前半にあって、そのタメがあるから終盤の物言うシーンが生きるんですよ。でも映画では隆良が偉そうに言うシーンが少し少ないから、「瑞月、わりとすぐキレたな」って思ってしまう。しかも映画ではもっと言い方がきつくなっているというか感情的すぎるきらいがあって、小説の「静かに、だが的確に相手の急所を突く」感じが薄れちゃってるんですよね。

 さらに理香が拓人に洗いざらいぶちまけるシーンについても、ちょっと感情を出しすぎなんじゃないかと。ここも、原作の「静かに、だが的確に相手の急所を突く」(こういうのって女性のほうが遥かに男より上手)感じが薄れてます。理香が感情的になりすぎて泣いたりするんですよ。いや、違うんじゃない、と。冷徹に言うから拓人はますます追い詰められるんですよ。隆良にしても同じ。偉そうにしてた男がずばっと急所を突かれる、あのひやりとさせられる瞬間が映画ではどうも薄味になっていたことが残念でした。

 あと中田ヤスタカが手がけた音楽もなあ……この人劇伴とかは向いてないんじゃないですかね。拓人と瑞月のシーンでかかるピアノ曲とか、日本映画にありがちな「さあ、ここでしんみりしてくださいね」みたいなテンプレ的な曲調というか。主題歌は嫌いじゃないんですけどね。

 といろいろ文句も言いましたし同じ朝井リョウ原作という意味では『桐島』には劣るかなと思いますが、映画館に観に行く価値はあります。僕は三浦大輔監督の次の映画も楽しみにしています。

 

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愛の渦

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