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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ハドソン川の奇跡』を観た

外国映画

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 はい、『アメリカン・スナイパー』以来のクリント・イーストウッド監督作です。

 今回も実話をベースにしたお話で、2009年に起きたアメリカの旅客機のハドソン川不時着水事故が題材です。トム・ハンクスイーストウッドが組むということで、2人とも大好きな僕はワクワクしつつ観ました。

 旅客機事故が危機一髪回避されるも、その後機長の責任が問われるという意味では2013年に公開されたデンゼル・ワシントン主演の『フライト』を思い出す人も多いんじゃないでしょうか。といっても僕は全然思い出さなくて、ネットで感想を見てたら言及してる人が多かったので「あぁ、そういえば」と思ったのですが。

 『フライト』はフィクションで、機長がとんでもないアル中だったので責任を問われてしまうという展開でした。しかし『ハドソン川の奇跡』は長年の経験と直感から、見事な判断で乗員乗客155人を救ったんですね。というわけで、観客の大半は端から「この事故で誰かが死ぬことはないし、機長もまあ結局疑いは晴れるんでしょ」という前提で映画を観ることになります。

 ところがそういった前提は、「もし最悪の事態になっていたら」という映像で一度リセットされます。トム・ハンクスが演じる機長サリーの妄想(夢だったかな)では、旅客機はニューヨークのど真ん中のビルに突っ込み爆発炎上します。この映像がやけに真に迫っていて怖いのは、やはり我々が9.11という現実を知っているからでしょう。アメリカ人でなくても、あの映像から受けた衝撃はものすごいものだったはずです。

 映画は、機長サリーとアーロン・エッカート演じる副操縦士が事故調査委員会によって追及を受けるパートと、事故の回想(もし大惨事になっていたらという妄想も含め)を交互に映し出していきます。乗客が異常を感じ直後に「衝撃に備えて」と言われて恐れおののくシーンは、次の展開がわかりきっていてもすごく怖いです。実は僕、生まれてこのかた飛行機に乗ったことがないんですが、改めて一生乗りたくないと思いました。不思議なのは、このくだりが割りと何度も出てくるのに、映画の後半に行くほど怖さが増していくことですね。どうしてなんだろうと思いますが。

 あとこの映画でいいなと思ったのは、不時着水した直後。川に落ちたので浸水したり、外はものすごく寒かったりで、劇的に演出しようと思えばいくらでもできるはずなんですよ。実際、近くのフェリーがすぐに救出に来たりするんですが、劇映画にするのならもうちょっとそのあたりをずるずる引っ張るところを、実に潔く、劇的な音楽をかけるわけでもなく見せていく。サリーが最後まで残って逃げ遅れた乗客がいないか確認するところだって、もっとドラマチックに見せることはできるはずです。でもイーストウッドは過剰に演出せず、これほどの危機を救ったサリーが一人の“プロ”として職務を遂行していくところを淡々と映し出す。ともすれば「U・S・A!U・S・A!」の大合唱になりそうなお話なのに、サリーはずっと冷静で、155人全員が助かったことを聞いてほっとするシーンでも微妙に眉を動かすぐらいのもの。その様子を観ていると、実はサリーは心中で「自分の判断は本当に正しかったのか。結果的に助かっただけで、自分はやはり乗客乗員の命を危険に晒したのではないか」という疑念に苦しめられていたのではないかと思います。

 前作の『アメリカン・スナイパー』と呼応するようなシーンもあったと思います。『アメリカン・スナイパー』の主人公クリス・カイルが、帰国した際に「あなたは英雄だ」と言われて複雑な表情を浮かべる場面がありましたが、『ハドソン川の奇跡』では夜中にバーに寄ったサリーが酔客たちにやはり英雄扱いされて居心地の悪そうな顔をします。クリスもサリーも、このときはとても孤独な人に見えます。

 数多くの西部劇や刑事アクションで英雄を演じてきたイーストウッドが、80代後半にして「英雄視される男たちの孤独と違和感」をカメラの後ろから描いていることがとても興味深いです。「あなた自身、映画の中で英雄を演じることに違和感を感じていたんじゃないですか?」と聞いてみたくなります。イーストウッドは「さて、どうだろうね」と一笑に付してしまうかもしれませんが。次に彼が撮る映画がどんな作品になるのか、ますます気になります。

 あ、ニューヨークの夜のシーンでイーストウッドカメオ出演してましたね。写真でだけど。

 

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