ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『怒り』を観た

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www.ikari-movie.com

 キャストが豪華なわりにあまり客が入っていないという噂の『怒り』です。一番怒りを感じているのは東宝なんじゃないかっていう。知らんけど。

 吉田修一原作、李相日監督で、これは妻夫木聡深津絵里が共演した『悪人』以来の組み合わせですね。しかしまあ、吉田修一の小説もよく映画化されますねえ。東野圭吾宮部みゆき伊坂幸太郎角田光代、そしてこの吉田修一の小説は本当に映画化しやすいんだろう(うまく映像化できているかどうかはともかく)なと思います。

 吉田修一って、読みやすいけど特に読後に何かが残る作家という印象です。個人的に。だから映画版を観て「小説のほうが断然いい!」と思うこともほとんどなくて、『横道世之介』にいたっては映画のほうがいいと思ったぐらい。

 ただ『悪人』は全然印象に残っておりません。僕はどうも李相日という人の映画が苦手でして、けなす人を見たことがない『フラガール』でさえ1ミリも感動しなかったぐらい。『許されざる者』についてはこのブログでも過去に触れたと思いますが本当に最悪だと思っているし(柳楽優弥だけはいい)、全然好きな監督じゃないんですよね。

 で、小説を読み(まあ普通におもしろい)、映画を観てきたわけですが、僕としては『フラガール』よりも『悪人』よりも『許されざる者』よりもこの映画が一番見応えを感じました。少なくとも前記3作みたいに途中でダレない。坂本龍一の音楽の功績もあるのかなあとは思いますが(正直、ちょっとオーケストレーションがゴージャスすぎて画と合ってないなとも感じたけど)、よくも悪くも全然無駄がない映画になっていて、141分の長さを感じさせない作品にまとまっていました。

 原作がものすごく好きな人は色々と言いたいことがあるかもしれませんね。三浦貴大が演じてた刑事のエピソードが映画ではほとんどカットされているし、広瀬すずが演じた泉の母親のだらしなさなんかもあまり細かくは描かれません。それから、ネタバレになるんで言いませんが、最大の原作との違いといっていい、殺人事件の犯人が明らかになる場面も、小説のほうが好きな人にとっては違和感たっぷりかも。僕は映画という表現形態を取るなら、許容範囲内の脚色だと思いましたが。

 この物語は結局サスペンスやミステリーの要素よりも、「いかに人を信じられるか」または「信じることの怖さ」をも描いていて、コミュニケーションの話でもある。そういう意味では、いじめや障害者への差別という表面に見えるテーマの奥でディスコミュニケーションを描いた『聲の形』にちょっと通じる部分もあるのかなと。

 ただし『聲の形』が、ディスコミュニケーションの果てに1人の少年が大切なことに気付くというハッピーエンド的な物語を描いていたのに対して、『怒り』にはもっと辛辣な結末が用意されています。もちろん最終的に救われる人もいるのだけど、取り返しのつかないことになってしまう人たちもいる。もやもやとしたものが残る終わり方ではありますが、このお話はそれでいいんだと思います。

 俳優はみんないいですが、特にいいなと思ったのは佐久本宝。いい意味での朴訥さというか素朴さというか、これだけの豪華な俳優たちに囲まれても(いや、だからこそなのか)ひときわ異彩を放っていて、今後の活躍が期待される若手だなと感じました。『許されざる者』でも思ったけど、スパルタで知られる李監督はやはり俳優を育てることがうまいのかもしれませんね。実は映画そのものの演出よりもそこに才能があるような気も…。

 あとは宮崎あおいも良かったですね。最近すっかり影が薄くなってた気がしますが、面目躍如。役作りのために太ったとかっていうのはあまりはっきりとはわかりませんけどね。共演してる松山ケンイチが『聖の青春』のためにあんだけ太ったのを見てるし、比べるのもアレだけど『モンスター』のシャーリーズ・セロンとかを知ってると「役づくりのために増量敢行!」とか言われても「ふーん、そうなんだ」って感じで……って、結局けなしてんじゃねえか。まあ見た目はともかく演技はいいです。クライマックスでちょっと泣かせ過ぎな気がするけど。

 全然関係ないけど、『僕の妻と結婚してください』だっけ? あれの予告の織田裕二の笑顔に狂気しか感じないのは僕だけでしょうか。『シャイニング』のジャック・ニコルソンより怖いですよ。

 

怒り(上) (中公文庫)

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怒り(下) (中公文庫)

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小説怒りと映画怒り - 吉田修一の世界

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「怒り」オリジナル・サウンドトラック

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