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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『君の名は。』を観た

日本映画 アニメ

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www.kiminona.com

※ネタバレあり

 内容が内容だし夏休みってことで、中学生?とか高校生が多かったです。カップルは意外と少なくて、いかにもボンクラな感じの男の子が3〜4人組で観に来てたり。

 新海誠監督の作品は有名な『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』を観ていたぐらいだったんですが、率直に言わせてもらうなら、良くも悪くも「童貞の妄想」みたいな話だなあという感想を持ちまして。それから、もちろんあの、実写かと思ってしまうぐらいの美しい風景描画です。

 Netflixを検索したら新海監督の主要作がそろっていたので、『君の名は。』を観たあとに『秒速』『言の葉の庭』も含めて全部観てみました。

 新海監督の作品の特徴をざっと挙げるとこんな感じです。

・思春期
・離れ離れの男女
・電車
・クレーター
・非現実的なほどに美しく描かれた空
・モデルとなった土地を本物以上に美しく描く
・逆光表現と光芒
・女性の生足
・多用されるモノローグ
・登場人物が、実在する小説などの書物を読んでいる

 ほかにもいろいろあると思いますが、僕が覚えてるのはこのあたり。ほぼどの作品にも共通するんじゃないでしょうか。

 今回の『君の名は。』でも

・思春期
・離れ離れの男女
・電車
・クレーター
・非現実的なほどに美しく描かれた空
・逆光表現と光芒
・女性の生足

 あたりは踏襲されています。モノローグは今回はそれほど多くなかった気がします。正直、過去作はモノローグがうるさいなと思うことが多かったので、ここはよかったのですが、今回は音楽が過剰だなと思いました。

 音楽を手がけたのはRADWIMPSですが、劇伴はそんなに悪くなかったんです。でも歌ものが流れる回数が多すぎる。『秒速』も途中で山崎まさよしの「One more time, One more chance」のミュージックビデオみたいになりますが、1回だけでした。今回は確か4曲ぐらい歌ものが流れます。このことで、物語への没入感が阻害される印象を受けました。大人の事情なのか新海監督の意向なのかはわかりませんが、歌ものが流れるのはエンディングだけとか、+挿入歌1曲ぐらいにしておけばよかったんじゃないでしょうか。

 映画の冒頭はテレビシリーズのアバンタイトルみたいな演出になっていて、なんでこんな導入部になってるんだろう、と思ったんですが、これも結局歌ものを入れるにあたって必要になってしまったんじゃないかなと邪推してしまいます。テレビアニメを見下しているわけではないし僕も観ていますが、この映画にあのオープニングは必要だったのかな?とも思います。

 さて物語としてはよくある「入れ替わりもの」になっています。大林宣彦の『転校生』が有名で、最近はマンガの『山田くんと7人の魔女』なんて作品もありますね。この思春期の男女が入れ替わるという設定自体には新味はないのですが、『君の名は。』では「一週間のうち数度起こる」というルールになっていて、ここはちょっと面白かったです。

 そして、入れ替わりから起こるちょっと笑えるトラブルを描く前半からうって変わって(いくらなんでも『これは夢なんだ』だけで納得し過ぎな気はするものの)、後半では大災害を防ぐために主人公2人が奮闘するという筋書きも面白く感じました。新海監督の作品なので、やっぱりただ男女が入れ替わってドタバタするだけではなく、どこか悲劇の芽のようなものが顔を出してくる。

 で、まあそれはいいんですけど、主人公の瀧と三葉がいつの間にか好き合っているのにはちょっと戸惑いました。なんていうか、二人がお互いを意識するような描写がほとんどなかったような気がするんですが。まあこの歳頃の恋なんてそんなものなのかもしれませんが。

 後半、人々を救うためにどえらいことをするなあと思って、まあそれはしかたがないかとは思っていたんですが、三葉が父を説得するシーンがごっそり端折られていたのには少し驚きました。あれだけめんどくさそうな父親をどうやって納得させるの?という疑問が当然のごとく湧いたのですが、結局は「まあそのへんは想像してください」という作りになっていて、ちょっとこれはどうなのと。それならあの父親をあそこまでめんどくさい男にする必要があったのかと。

 あとあの父親の行動原理もよくわからなくて、嫁が死んでショックなのはわかるけど、それで絶望して娘2人を置いていくってどういうことですか。こんなやつ説得できるのかよって思うんですけど。なんか見落としてたのかな、僕は。

 後半でいえばクレーターの描写もなんか変で、あんなにクレーターの周りって遊歩道みたいになってんのかなっていう。ちょうど人1人が歩けそうな感じになっていて、『東京物語』で笠智衆東山千栄子が歩く堤防を思い出しちゃいましたよ。そんな奴は僕だけだろうけど。しかもあのクレーター、あんなに標高の高いところにあったの?って驚きました。あれは現実ではないんですかね? どうだったかな。忘れちゃった。

 それから、カメラ回しすぎ、空見上げすぎって問題もあります。そういえば『秒速』もよく空見上げてたなーカメラ回ってたなーって映画館で思ったんですが、観直してみたら『君の名は。』ほどには回ってなかったし見上げてもいなかったです。こういう大技みたいなのはやっぱりクライマックスに取っておくべきだと思うんですが、あんまり連発されるとありがたみが消えます。よくダメな日本映画でスローモーションが多用されますが、それに近いものを感じる。

 とまあこんな感じでけなしてばっかりですが、なぜかそれほど不快感は感じないのが不思議なところ(近くの席でべらべら喋ってたバカなカップルに腹を立てていたからかもしれない)。新海監督の作品って、たとえば『星を追う子ども』とかどうしようもない映画だと思ったんですがそれでもやっぱり腹は立たないんですよね。本人がほんわかした人だからかな。あれが三谷○喜とかだったら死ぬほど叩きたくなるんですけどね。あとなんだろう、「童貞の妄想」だなあと思いつつ自分もこういう感覚を持っていた時期があるなあっていう後ろめたさがあるから、ボロクソに言う気になれないのかも。だから、思春期から割りと大人びて現実的だった人とかは観るとイラつきまくるのかもしれません。

 役者陣はみんな良かったと思いますが、瀧が憧れる美人の先輩を演じた長澤まさみが良かったですし、三葉の祖母を演じた市原悦子が素晴らしかったです。あと神木隆之介のファンは「神木きゅんの女の子演技」に萌えることができると思うので、楽しめるんじゃないでしょうか。