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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ロブスター』を観た

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www.finefilms.co.jp

 阿佐ヶ谷の小さいけど素敵な映画館、ユジク阿佐ヶ谷で鑑賞してきました。ここは見逃した映画をよくかけてくれるので、自分の家からは少し遠いのですが重宝しています。「重宝しています」って、まだ2度しか行ってないけど。それはともかく、このユジク阿佐ヶ谷はロビーにでっかい黒板があって、僕が行った時には「地獄の婚活パーティー!」という文字とともにでかいロブスターが描かれていました。

 『ロブスター』はまさにその通りの「地獄の婚活パーティー」映画です。どこの国なのか、そして時代設定も不明なのですが、独身者がひとりものとして生きる権利を持たない世界が舞台になっています。ここではひとたび独身者になると、45日以内にパートナーを見つけなければいけない。見つからないと、動物に変えられてしまうのです。ただし動物の種類は選ぶことができて、コリン・ファレル演じる主人公デヴィッドは「ロブスター」を希望します。全然知らなかったんですが、ロブスターってものすごく長生きできる生き物らしいですよ。正直、ロブスターになって120年も生きてもつまらないと思うんだけど…。ちなみにデヴィッドの兄はすでに犬に変えられています

 デヴィッドは豪華なホテルに連れて来られ、地獄の婚活パーティーでなんとか相手を見つけようとしますがうまくいきません。そのうち、ジョン・C・ライリー演じるおっさんとベン・ウィショー扮するイケメンと少し仲良くなります。しかしジョン・C・ライリーは禁じられているオナニーをしてしまったことをとがめられ、手をトースターでこんがりと焼かれてしまいます。嫌すぎますね。こんなところにいたら僕なんか右手が消し炭になっちゃいますよ。

 いよいよ期限も迫り焦ったデヴィッドはとりあえず適当な女を選びますが、この相手がもう『ノーカントリー』のアントン・シガーも真っ青の鬼畜野郎(野郎ではないか)なのです。

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 当然その女とはうまくいかず、ホテルを脱走するデヴィッド。そこで彼は、山奥で暮らすおひとり様集団に出くわします。これでパートナーを無理に探さずに済むとほっとするデヴィッド。しかし世の中そううまくはいきません。こいつらはこいつらでとてつもなくハードコアなおひとり様集団で、ラブコメ死ね死ね団も真っ青な戒律を設けたグループなのです。

 そしてそのリーダーはレア・セドゥ。にこっとしてれば美人なのに(すきっ歯なのがバレるけど)、この映画の彼女は超絶怖い。『さざなみ』の感想でイザベル・ユペールシャーロット・ランプリングが「2大怖いおばさん女優」と書きましたが、『ロブスター』のレア・セドゥを観ていたらこの人も将来絶対に怖いおばさん女優になるな…と思いました。というか、おばさんではないけどすでに怖い。

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 しかしおひとり様集団にはこんな冷血女だけでなくまともな女もいました。レイチェル・ワイズ演じる“近視の女”です。明確な役名はありません。そしてデヴィッドはこの近視の女といい感じになっていきます。しかしそんなことをラブラブ死ね死ね団の団長レア・セドゥが許すはずもなく…どうするデヴィッド!

 ヨルゴス・ランティモスの映画はこれが初めてなんですけど、けっこう好みな作風でした。ハネケみたいにちょっと無機質で感傷を許さない画作り。音楽のチョイスも良いし、まだ長編は2本?ぐらいしか撮ってないってのが信じられません。今後も映画祭の常連になるのだろうなと思います。

 それにしても独身者は動物にされてしまうって、これほど身につまされる話があるでしょうか。しかもそこを逃げ出したら逃げ出したで、うっかり恋しようものなら「いちゃいちゃしてんじゃねえ(意訳)」と粛清されてしまうなんて、逃げ場がなさすぎる。どっちか選べといえば後者かもしれませんけど、「血の接吻」(観ればわかります)も嫌過ぎる。

 最後のアレについては、ネットを見ると結構解釈が分かれていて目からうろこでした。僕は町山智浩さんが谷崎を引き合いに出していたこともあって、てっきり素直に「そらまあ、そうなるわな」と思っていたんですが、確かに別の展開もありえますよね。でも、普段すごくひねくれてる僕ですが、あそこは素直に「いや、やったな。見せないだけで」と思いましたよ。そうじゃないとせつなすぎませんか? いくら『ミスト』みたいなラストが大好きな僕でもねえ。

 とにかくすごく面白い映画だったので、オススメです。ユジク阿佐ヶ谷では7月29日まで上映されているので、平日休みの人も学生もニートもGO!

https://yujiku.wordpress.com/shocking_fantasy/