読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『帰ってきたヒトラー』を観た

f:id:q050351:20160709164254j:plain

gaga.ne.jp

 原作を読んでから観に行きました。基本的にナチズムとかヒトラーに興味があるんですよね。といってもその思想に共感するわけではありませんが。

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)

 

↑ほんと面白いのでオススメです。

 映画館では随所で大きな笑い声が起きていて、特に『ヒトラー 〜最後の十二日間〜』のパロディシーンはかなりウケていました。要するに「総統閣下シリーズ」です。

↑オリジナルのクリスマスネタってどこいったんだろうというぐらいいろんなバージョンが作られている。

ヒトラー ~最期の12日間~ Blu-ray

ヒトラー ~最期の12日間~ Blu-ray

 

 そのほかにもいくつか小ネタが挟まれていて、映画館はとても盛り上がっていたんですけど、後半では一変してお通夜のような雰囲気に。僕個人としても、2本の映画を観たような感覚になりました。

 小説でも映画でも同じように感じることが、いつの間にかヒトラーという人物に自分が魅了されていくことです。ヒトラーって人間扱いされていませんし人間扱いすること自体が禁忌となっているわけですが、そのへんにいたらけっこう魅力的な人間なんではないかと思います。無難なことばかり言う人よりは白黒はっきりさせる人間が好まれるというのは世の常ですよね。白黒はっきりさせてくれる人がいれば楽ですからね。しかもこちらの都合のいいようにはっきりさせてくれる人ならなおいい。言っていることは多少おかしいが、まあ今自分たちが抱えている不満を解消してくれるならこの人についていってみようじゃないか…そういった隙につけこんでくるのがヒトラーのような人物でありナチズムのような思想じゃないでしょうか。

 しかもこの映画の中のヒトラーはちょっとドジだったりズレているものだから、かわいいおじさんにも見えてくる。絶対悪としての象徴のヒトラーには見えない。「なんだ、いいところもあるじゃないか。で、ちょっといいことを言うじゃないか」と思わされる人は多いでしょう。札付きの不良とかチンピラが信号を渡る老人に手を化しているとすごくいい人に見えるようなものかも。

 中盤でヒトラーが演説するシーンがありますが、集まった聴衆はいつの間にか彼のスピーチに集中していきます。僕の知人で「あのシーンで俺はヒトラーに心酔した」と言う人もいて、正直にいって僕は複雑な気持ちになりました。戦後70年が経ちあれだけ酷い目にあっても、人の心というものはいともたやすく操作されてしまうのだなと。

 この映画がすごく際どいなと思うのは、↑であげたようにヒトラーを再評価してしまう人を生み出しかねないからです。というのは、「魅了されるけどやっぱりこの人の言うことはおかしい」というブレーキをかけられる人だけがこの映画を観るわけではないからです。ドイツを含めヨーロッパではヒトラーが(良くも悪くも)絶対悪の象徴となっているのでブレーキをかけられる人の割合は多いかもしれませんが、今の日本でどれだけの人がこの映画のメッセージをちゃんと掴み取れるのか、個人的には不安に思います。お客さんがたくさん入っていると知ったときに「いいことだ」と思ったんですが、実は「ヒトラー、そんなに悪くなくね?」と思ってる人が多くいて口コミで広がり、さらにネトウヨナショナリストに利用されたらちょっと怖いなと感じます。

 映画ではいくつか改変がされていて、最も大きな変更点はザヴァツキという登場人物のキャラクターでしょうね。個人的には、ヒトラーの一人称で書かれていた小説と比べてより多面的にこの物語を観られるようになったので、ザヴァツキのキャラの変更はそれほど悪くないと思ったのですが、宇多丸さんはラジオでそのあたりに不満を漏らしていました。聞いてみて「そうか、なるほどね」と思ったので、映画を観た人は聞いてみたらどうでしょうか。ユーなんとかに落ちてますから…。

 それにしても本当に不安になってくるんだよな。この映画が伝えたかったことって、今の日本で本当に正確に伝わってるのかなって…。