『FAKE』を観た
森達也さんについては本を何冊か読んだし、確かソフト化はされてませんが東日本大震災のドキュメンタリー『311』も観に行きました。
今ドキュメンタリー作品で気になる人と言ったら、個人的にはこの森さんか想田和弘さんぐらいのものです。マイケル・ムーアもジョシュア・オッペンハイマーももうどうでもいい。
さて佐村河内守について僕は特に興味もなく例のゴースト騒ぎのときも「へ〜そうだったんだ」ぐらいなものでした。それは森さんも同じだったらしく、興味はなかったのだけど「彼についての本を書かないか」と言われてとりあえず取材してみたら「おもしれーから映画にすっぺ」となったようです。本書かないかって言った人涙目。知らんけど。
ユーロスペースで観てきたんですけど、もう人が多くて多くてすごかったですよ。ロビーが芋を洗うような状態で、本当に誰かが芋を持ってきたらそれはもう床に落ちて踏み潰されたりするんだろうなとは思ったんですけど、それぐらい人が多かったということなんですよ。なんとなく思うんですが、森達也のことを知らなかったり映画も普段あまり観ない人も来てたんじゃないかと思います。
とはいえ監督は森達也ですから、この映画で何か新事実が発覚するようなことはほとんどない。佐村河内守を徹底的に裸にする映画でもなければ慰めてあげる映画でもないと思うんですが、最終的には森達也の怖ろしさというか、いやこれは森達也という人を介した“何か”の怖ろしさのようなものが見えてくる作品になっているのではないかと思います。
特にキャッチコピーにもなっている“最後の12分間”は強烈です。一応言っておきますがエンドロールで劇場を出ないようにしてください。あとアップリンクの代表の方が森監督にインタビューしていたんですが、その際に森監督が激おこ状態でちょっと面白いので、これを事前に読んでおいてもいいかもしれません。
しかしこの映画は怖ろしいだけではなくて、随所で笑えます。僕は映画を観ていてニヤニヤすることはあっても吹き出すことってほとんどないんですが、この作品については何度か笑ってしまいました。どこで笑ったかということは言いませんが、森さんって著書を読んでいても思うことなんですが、ユーモアのある人なんですよね。で、腰が低いように見えるんだけど突然鋭い切っ先を相手の喉元に突き付ける。ほんと怖い人です。
観ていないとなんのことかわからないと思いますが一応映画の内容について捕捉。劇中で「曲の作り方」という取説が出てきますが、あれはシーケンサー(音楽をプログラミングする機械、あるいはソフト)なので、作曲法の指南書ではないです。あそこで笑い声が起きていたので、ちょっと誤解している人もいるのではないかと思いここに記しました。