ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観た

f:id:q050351:20160403220924j:plain日本/180分

監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
撮影:神戸千木
音楽監督:桑原まこ
出演:黒木華綾野剛Cocco、地曵豪、原日出子 ほか

2016年の東京。派遣教員として働く平凡な女性、皆川七海(黒木華)。ある日、SNSで鶴岡鉄也(地曵豪)という男性と知り合い、そのままトントン拍子で結婚へと至る。結婚式に呼べる友人・親族が少ない七海は、代理出席の手配を“なんでも屋”の安室(綾野剛)に依頼する。しかし新婚早々、夫の浮気疑惑が持ち上がると、反対に義母(原日出子)から七海が浮気を疑われ、家を追い出されてしまう。行き場もなく途方に暮れた七海は安室に助けを求め、彼が斡旋する怪しげなバイトを請け負うようになる。やがて、豪邸で住み込みのメイドとして働き始めた七海は、謎めいたメイド仲間、里中真白(Cocco)と意気投合、互いに心を通わせていくのだったが…。(allcinemaより)

 チネチッタで鑑賞。

 岩井俊二といえば『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』な人、『スワロウテイル』な人、『リリイ・シュシュのすべて』な人、『Love Letter』な人、いろいろいるでしょうけど、僕は『四月物語』が好きです。

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 『リリイ・シュシュ』は最初観たときとても気に入ってDVDも買ったりしたんだけど、30過ぎてからふと思い立って観てみたら「あれ?」て感じでした。もう僕が若くないからかな、と思ったのですが。

リリイ・シュシュのすべて [Blu-ray]

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  岩井俊二への思い入れは特別ないのですが、かといって嫌いではない。久々に『ヴァンパイア』が出たときも少し気になってBlu-rayを借りてきて観てみたり。

ヴァンパイア [Blu-ray]

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 ただ、やはり岩井俊二の作品って撮影監督の故・篠田昇の力も大きかったと思うんですよ。実際、篠田さんが亡くなってからの岩井監督は寡作になっています。もちろん篠田さんがいないから、というだけではないのでしょうけど(ちなみに『ヴァンパイア』は岩井監督自ら一眼レフで撮っている)。

 そんなわけで、今回誰が撮影を担当しているのかがとても気になっていたのですが、篠田さんに師事していた神戸千木という人がいい仕事をしています。光の使い方とか手持ちカメラの揺れ具合とか。岩井監督がよくやる小刻みジャンプカットみたいなのと相まって、かつての(映像面での)岩井美学が戻ってきた気がしました。

 主演女優・黒木華をものすごく可憐に撮っていることもこの映画の良さの1つでしょう。これまで“演技はうまいけどもうひとつ華がない”という印象だった彼女ですが、はっきりいってこれまでのどの監督よりも黒木華の魅力が引き出されていると思います。山田洋次あたりが撮ると“単なる昭和顔”で終わってしまうんですが、やはり岩井監督は女優を撮ることがうまいですね。

 あと役者では綾野剛がはまり役で素晴らしかったです。こう言っちゃ失礼ですが、あの胡散臭い感じが安室行枡(このあたりの言葉遊び感も岩井美学が戻ってきた感じ)という役にぴったり。この安室という男がものすごく不思議なバランスのキャラクターなんですよね。いい人と言い切ることもできないし悪い人と言い切ることもできない。いわゆる記号的なキャラではありません。観てる間も観たあとも「あいつなんだったんだろう」と考えこんでしまうような変な人。いやむしろこの安室って人ならざるものなんではないかと思ってしまうぐらい。

 とにかく、黒木華演じる七海が困って安室の手を借り、結局はドツボにハマっていく前半は文句なしの面白さです。このあとどうなるんだろうというワクワク感がすごかった。

 ただ、結婚式の代行出席サービスで知り合った真白(Cocco)と仲良くなりはじめるあたりから僕はなんか冷めてしまいました。急に緩むというか、“さっさとこのめんどくさそうな女と手を切ってくれないかな”と思って。彼女と一緒に踊ったりするシーンはなんだか『花とアリス』の蒼井優のバレエシーンの焼き直しを見せられているようで白けちゃいました(しかも蒼井優のバレエシーンが物凄く良かっただけに今回のは劣化コピーのようにすら見えた)。

 結局後半は蛇足に思えたというか、3時間もの長さにする必要ある?と思ったのが正直なところです。例えば大学の同期生と会って話すところとか、あれいりますかね。原作ではその同期生の元職業とかがポイントになってるんですけど、映画ではそのあたりが明かされません。なんか配信ドラマ版?ではそこも補完されてるのかもしれないですが、そんないくつものバージョンを作られても…という感じ。だいたい映画だけで3時間もあるのに、他にドラマ版を作るって。単に作品の魅力を薄めているように思える。

 あと岩井監督っていつも音楽の使い方が紙一重だと思うんですが、今回は過剰です。しかもG線上のアリアみたいなドラマチックで誰でも知ってる楽曲をあれだけ流されるとすごく食傷します。そのへんの大学生の映画のBGMじゃないんだから。

 とはいえ良くも悪くも岩井監督らしさのようなものは随所に観られるので、やっぱりファンは必見だと思います。僕の中では『ヴァンパイア』と同じぐらいの満足度でしたが……。