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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『牡蠣工場』を観た

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Oyster Factory/日本、アメリカ/145分

監督:想田和弘
撮影:想田和弘
編集:想田和弘

舞台は、瀬戸内海にのぞむ美しき万葉の町・牛窓岡山県)。岡山は広島に次ぐ、日本でも有数の牡蠣の産地だ。養殖された牡蠣の殻を取り除く「むき子」の仕事は、代々地元の人々が担ってきた。しかし、かつて20軒近くあった牛窓の牡蠣工場は、いまでは6軒に減り、過疎化による労働力不足で、数年前から中国人労働者を迎え始めた工場もある。東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきた一家は、ここ牛窓で工場を継ぐことになった。そして2人の労働者を初めて中国から迎えることを決心。だが、中国人とは言葉が通じず、生活習慣も異なる。隣の工場では、早くも途中で国に帰る脱落者も。果たして牡蠣工場の運命は?

 シアター・イメージフォーラムで鑑賞。

 初めて観た想田和弘監督作品は『精神』です。

精神 [DVD]

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 岡山の精神科についてのドキュメンタリーなのですが、この作品のインパクトはすごかったです。あまり詳しく言ってしまってもアレなので詳しくは書きませんが、ぼーっと観ていると突然顔面を張られるような強烈な場面に出くわします。もし想田監督の作品を観たことがないなら、この『精神』から入るのがいいかもしれません。

 『牡蠣工場』はタイトル通り、岡山にある牡蠣工場についてのドキュメンタリーです。

観察する男 映画を一本撮るときに、 監督が考えること

観察する男 映画を一本撮るときに、 監督が考えること

 

 どうしてこの牡蠣工場を題材に選んだのかは、↑の本に書かれています。

 想田監督作品の中でも、『牡蠣工場』は割りと地味な部類に入るドキュメンタリーだと思います。『精神』ほど強烈な場面は出てこないし、『選挙』ほど笑えて滑稽なわけでもない。この作品は「なんとなく面白そうだと思って牡蠣工場を撮っていたら世界の縮図がぼんやりと見えた」という映画なので、じっくりと目を凝らして観る必要があります。じっくりと目を凝らしても↑の本を読んでようやく「あぁ、そういうことか」と気づく僕のような頭の悪い観客もいますが。

 この映画で見える世界の縮図というのは、大きく分けて「漁師の跡取りがいない」「震災によって故郷から離れた人」「中国人労働者」という3つの要素でしょう。想田監督も本の中で述べていますが、日本人は魚を大量に消費するのに漁業の後継者がいない、そして魚は昔より獲れなくなっているのに単価は安くなっているそうです。肉より魚派の僕としては結構つらい現状です。いっちょ漁師やってみっか!と簡単な気持ちでなれるものでもないですし。

 それから、もとは東北で牡蠣漁(だか工場だか)をやっていた人は、震災のせいで漁場がめちゃくちゃになってしまい、岡山でほかの人が持っている工場を継ごうとしています。岡山と東北では牡蠣の収穫の仕方など全然違うらしいです。

 映像の途中で仮設住宅みたいなものを建てるシーンがあるんですが、鈍い僕はこれが誰のための住居であるのかなかなかわかりませんでした。この住居には、中国からやってきた労働者が住むのです。ほかの工場の経営者?は「中国人はすぐに人の物を盗る」みたいなことを言います。しかし今回やってきた中国人青年2人を迎える渡邉さん?はとてもいい人です。内心はわかりませんが、不安げな中国人たちに対して結構気を使って接しています。中国人のほうもものすごく気を使っていて、初めて工場に入ったときは文字通り目を皿のようにして「自分たちが何をやればいいのか」ということに気を配っています。

 途中、何度か猫が出てくるのですが、この猫が日本にやってくる中国人労働者の隠喩でもあるのではないかということは、↑の本を読むまでわかりませんでした。単純に「猫かわいい」とだけ思っていました。ただ、中国人特有のよくわからない刈り上げみたいな髪型の男2人を観ていても正直「かわいい」とは思いませんでしたが。

 この映画の終わりは、この2人の中国人男性の不安げな表情のあとにやってきます。『ガチンコ』なら「このあと、一体どうなってしまうのか!?」みたいなナレーションが入ってくるところですが、もちろん『牡蠣工場』ではそんなことはおきません。中国人労働者の中にはせっかく日本に来たのに仕事がきつくてやめてしまう人も多いようです。でも、彼らがちゃんと働いたのかどうかは明示されない。彼らの不安そうな顔は、日本の行く末のようなとても危ういものに見えます。

 今回牛窓で撮影した映像には、映画に使っていないものがあるようです。それはもう1本のまた別の映画として製作されるようで、個人的にはそちらに興味があります。

 どうでもいいことですが僕は生牡蠣が食べられません。味は好きなのですが、生で食べると喉が腫れる。ヘタすると死ぬんじゃないかと思ったので、もう牡蠣を生で食べることはできません。とても悲しい。