ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『イット・フォローズ』を観た

f:id:q050351:20151217235715j:plainIt Follows/アメリカ/100分

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
撮影:マイケル・ジオラキス
編集:ジュリオ・C・ペレッツ4世
音楽:ディザスターピース
出演:マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット、ジェイク・ウィアリー、オリヴィア・ルッカルディ、リリー・セーペ ほか

19歳のジェイ(マイカ・モンロー)は、新しい彼氏ヒュー(ジェイク・ウィアリー)とデートし、そのままセックスに興じる。ところが、ことが終わるやヒューに薬を嗅がされ気絶してしまう。手足を拘束された状態でようやく意識を取り戻したジェイに対し、ヒューはにわかには信じがたい告白を始める。曰く、ジェイはある呪いに感染したという。それによって、感染者にしか見えない“何か”が、ゆっくりと、しかし確実に迫ってくる。そして最後には必ず殺される。それを回避したければ、誰かとセックスして移す以外に方法はない、というのだった。以来、ヒューの言葉通り、他人には見えないそれは、様々な人の姿をして自分に向かって歩いてくるようになる。いつ、どこからやって来るかも分からないそれに常に怯え、必死で逃げまどうジェイだったが…。<allcinemaより>

 結構前から海外では話題になっていたホラー映画です。監督は前作の青春映画『アメリカン・スリープオーバー』で既にある程度知られていたデヴィッド・ロバート・ミッチェル。ちなみに『アメリカン・スリープオーバー』は日本ではイベントか何かでちょろっと上映されただけで、字幕の付いたバージョンを観るのは難しいようです。

 予告編の時点からなんとなく思ってましたが、80年代ホラー臭が漂う作品です。ビジュアルイメージとか、エレクトロポップっぽい音楽とか、美人なんだかブスなんだかよくわからない主人公の女優とか、肌の露出が多めとか。生脚多めでこの上なかったですがね。

 主演のマイカ・モンローは『ザ・ゲスト』にも出てた人です。 

 

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 思えばこの『ザ・ゲスト』も80年代ぽい作品でした。マイカ・モンローは絶世の美人には見えないんですが、完全なB級女優にも見えなくて、得も言われぬエロさを醸し出すんですよね。これは『イット・フォローズ』自体についても同じことがいえて、一見チープでありながら撮影は妙にスタイリッシュだったりするのです。冒頭の長回しからして「こりゃ単なるB級ホラーじゃないな」という感じ。広角レンズを使ってシンメトリーな構図を作っているあたりとか、キューブリックのような洗練すら漂わせています。

 全体的に面白く観たんですが、ちょっと突っ込みたくなる部分もありました。例えば海辺で“それ”がやってくるシーンですが、主人公に肉薄してるくせに髪の毛を持ち上げるだけなんですよね。そんだけ近づいてるのにまずは髪を持ち上げるって、なんなんですか? 冒頭で別の少女の末路(前衛アートみたいな死体)を見せたりしてさんざん脅してるのに、カリスマ美容師(古い)みたいにヒロインの髪をまずは持ち上げるって、何その回りくどいやり方、と思っちゃいました。

 ただ、タランティーノが指摘していた「映画館で黄色い服の女が見えていたヒューに、なんで“それ”がすぐ襲いかかってこないんだよ」という矛盾点は特に気になりませんでした。要は「そのときの黄色い服の女は単なる勘違いで“それ”じゃなかった」ってことですよね。タランティーノはこの映画を褒めつつもいくつか気に入らないところをあげていて、ちょっとした論争になったようです。詳しくは↓でどうぞ。

 この映画、確かにゾッとさせられる部分はあります。主に“それ”の登場シーンですが、特に唸り声を上げるとか血を吐くとかそういうわざとらしいことはしません。ただ向かってくる。で、その造型が絶妙に気色悪い。中盤で出てくる片乳出した尿漏れおばさんとか、屋根の上で全裸になってる公然わいせつまっしぐらなおっさんとか、ほんとに絶妙な気持ち悪さなんですよ。もしかしたら日本のホラーも参考にしてるのかな、と思わせるところがあります。監督自身はジョン・カーペンターとかデヴィッド・クローネンバーグとかが好きと公言してるそうですが。

 ただし欧米的な怖がらせ方も多く、つまりそれはいきなり「どん!」と音を出して驚かせるようなタイプのものです。僕も何度かビクッとして尿漏れしてしまいました。嘘ですが。ちょっとこのあたりは欧米ホラーの定番て感じで少し萎えましたね。そりゃびっくりするよ、でかい音出したら。

 途中でドストエフスキーの『白痴』の一節が出てきます。ここで僕が感じたのは、映画の中に出てくる“それ”とは“死”そのもののことではないかということです。死はいつか確実にやってきます。ゆっくりと歩み寄りいつか確実に生き物を捉えるもの、つまり“それ”は死ではないかと。

 ただ、他人とセックスすることでそれを伝染させられるという意味ではこの解釈はなんだか不十分です。監督も「特にメタファーのようなものは込めていない」と言っているようなので、はい僕の解釈は間違いでした。

 映画の終わり方もまた、80年代ホラーぽいテイストです。ただ、『ザ・ゲスト』の終わり方がオマージュっぽい雰囲気になっているのに対して、『イット・フォローズ』のラストはどこか悲しげでした。80年代ぽいといってもただアホな若者たちがバタバタ死んでいくのをポップコーン食いながらゲラゲラ笑いつつ楽しむ映画にはなっていない、このさじ加減が本作の見どころかもしれません。

 「たくさん怖がらせてくれよ!」と思いながら観ると肩透かしをくらう気がするので、一種の暗い青春ものと捉えて鑑賞したほうがいいと思います。あと音楽がカッコいいので、Apple Musicを契約してる人はサントラをDLしましょう。

 それにしても生脚多めで嬉しかったなあ。