ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観た

f:id:q050351:20151228155414j:plainStraight Outta Compton/アメリカ/147分

監督:F・ゲイリー・グレイ
脚本:ジョナサン・ハーマン、アンドレア・バーロフ
撮影:マシュー・リバティーク
編集:ビリー・フォックス
音楽:ジョセフ・トラパニーズ
出演:オシェア・ジャクソン・Jr、コーリー・ホーキンズ、ジェイソン・ミッチェル、オルディス・ホッジ、ニール・ブラウン・Jr、ポール・ジアマッティ ほか

1986年、アメリカ屈指の危険な街、カリフォルニア州コンプトン。暴力とドラッグがはびこるこの街では、黒人というだけで警察から容赦ない取り締りの対象となってしまう。そんな中、元売人のイージー・E(ジェイソン・ミッチェル)はDJのドクター・ドレー(コーリー・ホーキンズ)、作詞ノートを持ち歩くティーンエイジャー、アイス・キューブ(オシェア・ジャクソン・Jr)らとともにN.W.A.を結成、自分たちの周りで起きている現実をラップにして世の中に訴えた。彼らの才能に目をつけたジェリー・ヘラー(ポール・ジアマッティ)がイージー・Eと共同でルースレス・レコードを設立、たちまち大ブレイクするN.W.A.だったが、その過激なリリックで“世界で最も危険なグループ”とレッテルを貼られ、警察との対立も深まっていく。その一方で、グループ内部でもいつしか不協和音が生まれていくのだったが…。(allcinemaより)

 梅田ブルク7で鑑賞。

 ネタバレあり。

 音楽は好きで、主にインディーロックとかエレクトロニカが好きなんですけど、ヒップホップはそれほど詳しくないです。まず英語力がないのでラップが全然聞き取れないし、やっぱり日本みたいな平和な国でぬくぬくと暮らしてると、“アメリカのストリートの現実”とか“差別”みたいなものは実感しづらいですからね。

 N.W.A.も名前は知ってるって感じで、この映画のあらすじを読んだ時に「えっアイス・キューブもドレーもN.W.A.だったんだ!」ぐらいの無知な僕です。「えっジョン・レノンポール・マッカートニービートルズだったんだ!」みたいな感じでしょうか。「えっ氷室京介布袋寅泰もBOΦWYだったんだ!」みたいな感じでしょうか。「えっ有吉って猿岩石だったんだ!」みたいな感じでしょうか。「えっ金本ってカープだったんだ!」みたいな感じでしょうか。「えっやまぐちりこってAKBだったんだ!」みたいな感じでしょうか。

 そんなヒップホップ弱者な僕ですが、この『ストレイト・アウタ・コンプトン』は普通に音楽伝記映画、青春映画として楽しめる傑作だと思います。

 2chを観てたら「『ジャージー・ボーイズ』のイル版」みたいなことが書いていて、「なるほどね」と思いました。

 もともとはチンピラで、フォー・シーズンズが売れていくと調子こいてほかのメンバーから愛想をつかされるトミー・デヴィートという人がいましたが、『ストレイト・アウタ・コンプトン』ではイージー・Eという人がこのトミー的なキャラクターになっています。

 映画の冒頭は、麻薬の売人をやっているEが「金払えやボケ」と仲買人(?)の家にやってきたものの、警察の麻薬捜査チームのガサ入れに巻き込まれそうになって逃げるというシークエンスから始まります。てか、ガサ入れどころじゃないですよあれ。戦争ですよ。装甲車みたいなので家破壊してますからね。

 本作の中心人物はこのEと、若いアイス・キューブです。アイス・キューブももちろん悪そうな奴ではあるんですけど、根が真面目というか頭が良さそうなんですよね。ノートにリリック(詞)を書き付けてるところとか、グループ内での不公平にいち早く異議を申し立てて脱退するところとか、映画界でも才能を発揮するところとか、とにかくこの人は器用なイメージ。途中、レコード会社で怒りを爆発させるシーンがあって、これは本当にあったことらしいんですが、古かったり安そうな家具ばかりを選んで破壊してたらしいです。このあたりもなかなか狡猾ですね。ヒップホップにそれほど詳しくない人はアイス・キューブに感情移入して観る人が多いんじゃないでしょうか。ちなみに、アイス・キューブの実の息子であるオシェイ・ジャクソン・Jrが父親の若かりし頃を演じています。アイス・キューブ自ら「お前俺の役やってみねえ?」と声をかけたそうで、なんかいい話ですね。

 N.W.A.のマネージャーを買って出るジェリー・ヘラーをポール・ジアマッティが演じています。予告編ではなんだかすごくいい人そうですが、本編の冒頭からうさん臭さ全開で、物語が進むにつれてどんどんボロを出していきます。ていうかジアマッティ、『ラブ&マーシー』でもブライアン・ウィルソンをそそのかす役やってましたよね確か。「いい人の皮かぶった畜生」て役がハマる顔つきではあるんですが、確かに。

 アイス・キューブに感情移入してしまうと書きましたが、観ているとだんだんEにも同情してしまうんですよね。映画用に脚色されているのかもしれませんが、自業自得なところもあるとはいえ落ちぶれていくEがかわいそうだと思ってしまう。彼にはアイス・キューブほどの器用さはなかったんですよね。だからジェリーにうまく操作されてしまった。2人が再会して仲直りするシーンは、その後の運命を前提に観てしまうのでとても切なかったです。

 それから、肝心のライブシーンもすごくかっこよかったです。とくにデトロイトで演奏を禁止された「ファック・ザ・ポリス」をやるシーンなんかはすごかったですね。ヒップホップは門外漢でもパンクとかが好きな人ならゾクゾクくるんじゃないでしょうか。

 しかし、2時間半もあるのに全然ダレないというのがこの映画のすごいところですね。おまけに僕みたいなヒップホップを全然知らない人でも楽しめる。『サイタマノラッパー』が全然おもしろくなかったという人(つまり僕なんですが)も、この作品は気に入るんじゃないかなと思います。