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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『独裁者と小さな孫』を観た

The President/ジョージア、フランス、イギリス、ドイツ/119分

あらすじ:独裁者のじいさんがクーデターに遭って孫と一緒にひいこらと逃げる。

 監督はイラン出身のモフセン・マフマルバフです。何やら可愛げのある名前ですが、画像検索してみると普通のおっさんが出てきます。非常に高い評価を得ている監督のようですが、この『独裁者と小さな孫』はそこまで海外でウケなかったようです。ただ、個人的にかなり好みなタイプのストーリーだったので、日本公開が決定してからずっと楽しみにしていました。

 舞台は架空の国です。大統領と小さな孫は、自分の国の夜景を見ています。大統領は、自分の権力の絶大さを見せるために電話1本で街の灯りを消してしまいます。そして孫にも「面白いからやってみれ」とすすめます。走ってる車がよく事故らねえなと変なところが気になりましたが、孫も面白がって電話で灯りを消します。そして「つけろ」と言いますが、灯りはつきません。突然銃声や爆発音がします。クーデターが始まったのです。ここから2人の逃避行が始まります。

 という筋書きを説明すると何やらやたら重苦しい物語のようにも思えるのですが、この作品にはうっすらとユーモアがあります。例えば孫が「うんこするからお尻拭いて」と大統領に訴えるシーンです。詳しくは書きませんが、大統領はいつ民衆に見つかって吊るしあげられるかわからないからハラハラして孫の尻どころじゃありません。

 マフマルバフと同じイラン出身の監督、アッバス・キアロスタミの映画も重苦しいテーマの中にかすかなユーモアが介在していることが多いかもしれません。「かもしれません」という曖昧な言い方をするのは、『桜桃の味』と『ライク・サムワン・イン・ラブ』しか観ていないので、実質知ったかしているからです。

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 ただし、主人公はなんせ独裁者ですからいつまでも孫のうんこの世話だけに追われているわけにはいきません。彼は逃げ込んだ床屋や昔知り合いだった娼婦のもとに駆け込みますが、「もっと国民のことを考えていてくれればこんなことにはならなかった」とか「あんたが私の人生をめちゃめちゃにしたのよ!」みたいなことを言われてしまいます。

 そして、暴力によって成された革命の例にもれず、やはり彼の国の新しい勢力もまた恐怖で民衆を圧殺していきます。独裁者は目の前でむざむざ人が殺されるのを目撃していきます。彼は思わず目を伏せます。独裁者は自分がやってきた行いの重さ、人ひとりがこの世から消し去られてしまうことの恐ろしさをようやく知るわけです。

 というわけで、物語的にはかなりわかりやすい寓話になっていると思います。あまりにわかりやすすぎるところがそこまで評価されなかった理由なのかもしれません。ただ、僕はこの映画のラストが割りと気に入っています。実際にはあんなことはありえないと思いますけど、監督の希望というか願いがあそこに込められているのではないでしょうか。あれがぬるいという人の気持ちもわかりますし、なんか唐突だと感じる人がいるのも仕方ないでしょう。そもそも、実際にあの後どうなったかはわからないですしね。

 ところで、独裁者が引きずり出される場所を見てカダフィを連想してしまうのは僕だけでしょうか……。