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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』を観た

f:id:q050351:20151122124138j:plainMichael H. Profession: Director/92分

 今、東京のシアター・イメージフォーラムでは『ミヒャエル・ハネケの映画術』という特集上映が行われています。

 ミヒャエル・ハネケオーストリアの映画監督で、悪名高い『ファニーゲーム』ほか数々の“胸糞映画”を撮っていることで知られる人です。

ファニーゲーム [DVD]

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 少し前にはカンヌにて『白いリボン』『愛、アムール』でパルムドールを2年連続受賞したことでも話題になりましたね。

白いリボン [DVD]

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愛、アムール [DVD]

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 どういう映画なのか気になる人は、何も調べずに『ファニーゲーム』を借りて観てください。ハネケ自身がリメイクしたアメリカ版『ファニーゲーム』のほうがTSUTAYAに置いてる可能性は高いと思いますが、できればオリジナル版を観てほしいです。 

ファニーゲーム U.S.A. [DVD]

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 一応言っておきますが、『ファニーゲーム』を観たあとで「具合が悪くなった」「人が信じられなくなった」「隣人に卵を分けたくなくなった」と苦情を申し立てられてもいっさい責任は取りません。

 で、今回の特集上映『ミヒャエル・ハネケの映画術』 なんですが、『ベニーズ・ビデオ』『ファニーゲーム』『ピアニスト』『白いリボン』はすべて鑑賞済みだったので、ただ1本だけ未見だった『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』を昨日観てきました。

 イメージフォーラムは満員で、席が足りない人のために折りたたみ椅子も用意されるぐらい。ぱっと見た感じ、男性と女性は同じぐらいの比率か、少しだけ男性が多いぐらいでした。本当はハネケがスカイプで挨拶をする予定だったそうなのですが、結局中止になったそうで、イメージフォーラムの偉い人と、今回の特集上映のタイトルの元ネタである本の出版社の方がトークをしていました。

ミヒャエル・ハネケの映画術 彼自身によるハネケ
 

 このトークは、ハネケがもともと俳優志望だったこととか、学生時代に子供を作って、すぐに働かなければならなかったこととか、これまで知らなかったエピソードが聞けて面白かったです。

 『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』は、『ベニーズ・ビデオ』の胸糞シーンから始まります。どう胸糞なのかはいちいち言いませんが、演技がリアルでとにかく嫌な気分になるシーンです。

 そのあとは、『愛、アムール』の某シーンを、ジャン=ルイ・トランティニャンの代わりにハネケが演じているワンカット長回しの映像が映し出されます。トランティニャン本人が演じる前にカメラの動きなどをテストするためでしょうか。そのほかにも『白いリボン』で演技指導する場面などが出てくるのですが、意外にもハネケは動きまわり、自分で演技をしてみせたりするのです。

 個人的なイメージとしては、ハネケはどっかり座って言葉少なに指示を出すイメージだったので、少し驚きました。じっとなんかしてられるか!とセットの中を動き回る彼は、とてもいきいきしています。子役の少女と楽しそうに話したり、ハリウッドから監督の依頼が来た時の話を面白おかしく語ったりします。劇場では結構笑いが起きていました。

 しかし、基本的にはにこにこしているハネケですが、やはり演出に関してはかなり厳しいようです。トランティニャンも「楽しそうにしてるのは監督だけで、俳優やスタッフは大変だ」と、冗談めかしつつも語ります。トランティニャンの相手役を務めたエマニュエル・リヴァにしても、「もう耐えられない」みたいなことを言ったりします。ハネケが、「質問が悪い」とインタビュアーをはねつける(ニコニコしてはいるのだけど)ところも見ることができます。

 「脚本を書くときにはすごく感情的になる」と話していたのは意外でした。「冷静になるのは全体の構成を考えるときで、セリフを書く時はすごく感情的になるし、そうでなければならない」みたいなことも言っていました。

 ドキュメンタリーは、構成として『愛、アムール』から昔の作品へさかのぼっていくような作りになっています。イザベル・ユペールジュリエット・ビノシュ、スザンネ・ロタールといった女優たちがハネケについて語ります。

 終盤、「なぜ苦しみをテーマにしたのか?」と聞かれた時に「苦しみが怖いからだ」(ちょっとうろ覚えだから間違ってたりして)と語るハネケの表情が印象的でした。基本的に、相手をやり込める時も優しく接する時もいつもにこにこしている彼が、少し居心地悪そうな顔をしている気がしました。「なぜ苦しみをテーマにしたのか?」という質問はものすごくシンプルな質問ですが、意外とこういったことを聞かれた時の方がギクリとする人なのかもしれません。

 とにかく、僕のようなハネケ好きにとっては観ていて本当に退屈しないドキュメンタリーで、90分という尺もちょうどいいですし、すごく面白かったです。他の上映作品についてはDVDなどで観られるので、このドキュメンタリーはハネケ好き必見なんじゃないでしょうか。

 どうでもいいですが、上映前に『ファニーゲーム』で使われていたNaked Cityの「Bonehead」が流れてたのも最高でした。ハネケにはなんか怒られそうな気がしますが、テンションブチ上がりでした。客席にきれいな女性が何人かいたことでもテンションブチ上がりでした。

 そうか、この人たちも『ピアニスト』のイザベル・ユペールみたいにSM趣味がある変態女性なんだなと思いました。嘘ですが。

 ところでSNSをテーマにしていたらしいハネケの新作『Flashmob(原題)』は製作中止になったそうです。うーん残念。ただしフランスを舞台にした別の新作が準備中だそうなので、楽しみに待ちましょう。

 しかし途中でライカか何かで撮られてたハネケのモノクロ写真、めちゃくちゃ良かったなあ。あのフォトグラファー有名な人なんだろうな。