ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

見ず知らずの外国人と一緒にナンパするはめになった話(後編)

f:id:q050351:20151103224258j:plain

notesleftbehind.hatenadiary.com

 前回の続き。

 ケヴィン(前回書き忘れましたが、仮名です)に「僕といっしょにナンパしようよ!」と提案された僕は少なからず動揺した。というのは、僕が典型的なコミュ障のアラフォー独身サブカルクソ野郎であり、知らない女の子に声をかけるなんてハードルの高いミッションを達成できるわけがないからだ。

「いや、俺はいいよ」
「なんで?」
「なんでって……俺はそういうのが苦手だから」
「大丈夫だよ」

 全然大丈夫じゃないよと思いながら歩いていると、早くもケヴィンは渋谷を歩く2人連れの女の子たちを物色し始めた。

「あの子どう? 好き?」
「いや……」
「あの子は?」
「普通……てかナンパなんかできないから」
「どうして? 怖くないよ大丈夫」

 こんな感じで話は堂々めぐりになってしまうのだが、まずはメシを食おうということになった。「何を食べたい?」と聞かれたのだけど、特にお腹も空いていなかったので「別になんでも」と回答。

 過去の国際交流トラウマがよみがえる。フジロックで「駐車券をちょっとの間貸してくれ」とわけのわからないことを言ってきた外国人につたない英語でゴニョゴニョ答えていたら、「Just say yes or no!」とすごまれた記憶だ。はいはい日本人はハッキリしないですよ、その中でも俺はとりわけ優柔不断ですよ……と半泣きになった記憶。

 しかしケヴィンは特に凄むこともなく、「なんでも君が食べたいものでいい」と言ってくれる。結局2人で渋谷の寿司屋に入った。寿司をつまみながら、「一体俺は何をやっているんだ」と思わずにはいられなかった。

 店を出て歩いていると、ケヴィンが時折女の子を指差して「あの子はどうだい?」と聞いてくる。「うーん」「まあ……」「別に……」などと生返事をし続ける僕。「ワイジャパニーズピーポー!!!」とキレられたらどうしようとビビってしまう。一瞬だけ『「NO」と言える日本』を読みたくなった。というのはウソだが。

 ケヴィンが最初に声をかけたのは韓国人の女の子の2人組だった。片方の女の子が僕と同じキヤノン製のカメラを持っていて、それをきっかけにケヴィンは話しかけたのだ。女の子たちは明らかに不審そうな表情を浮かべていた。というか、半ば怖がっていた。

 彼女たちは見るからに観光に来たという雰囲気だ。ケヴィンは「どこに行こうとしてたの?」と聞く。どうも、女の子たちは寿司を食いに行こうとしていたらしい。ケヴィンは「Oh、俺たち今食べてきたとこだヨ!」というふうに大きなリアクションで答えた。女の子たちは「だから何」という顔でこちらを見る。しかし、パク・クネが安倍晋三を見るときのような冷たい彼女たちの視線をケヴィンはものともしない。それどころか軽くボディタッチをしながら一緒に歩こうと促す。

 ケヴィンと話していない方の女の子があからさまに不審がりながらも英語で僕に歳を聞いてきたので、「サーティーシックス」と答えたが、彼女は特に反応しなかった。僕の発音がひどすぎたのか36と聞いて引いたのか、それはわからない。

 結局、僕らは自分たちが寿司を食べた店の前にやってきた。でも韓国人の女の子たちは別の店を探していたらしい。そもそも、「さっき俺たちここで寿司食ってたんだよ」と言われてもどうしようもないではないか。結局彼女たちは「私たち、探してる店に行くから…」といって去っていった。アンニョンも言えなくて、夏。

 ケヴィンはちっとも懲りておらず、「あそこに入ろう!」と言って近くのHUBへ続く階段を降りていった。僕もまだ懲りていなかったので一緒に降りた。ケヴィンは入り口近くにいた20代初めぐらいの若くて頭の悪そうな子にいきなり声をかけた。今度の女の子たちはあからさまに不快そうな顔をしたので、僕は彼女たちにベタベタと触るケヴィンの手を引いて「やめよう」と言った。彼女らは「ちょっとなんとかして〜」と迷惑そうに僕に言った。「ごめんね、ちょっとこの人酔ってて」と適当に謝りつつも心の中では“うるせえエビフライぶつけるぞ”と理不尽な悪態をついていた。

 HUBの中は暇そうなバカども人でごった返していた。ケヴィンは早速女の子を物色し、隅っこで飲んでいる2人組に声をかけた。本当にめげない奴だなあと感心してしまうと同時に、本当にすぐめげる奴だなあと自分自身に対して感心する。ケヴィンにとってナンパが成功するか否かは問題ではないのだ。彼は過程を楽しんでいる。それはそれでひとつの人生の楽しみ方だと言えるだろう。

 今度の女の子たちは、千葉からやってきた子たちだった。そのせいかどうかわからないが、ケヴィンの話を一応ちゃんと聞いている。僕は落ち着かない気持ちになってきたので、ケヴィンに何か飲みたいものはないかと聞いて、彼の分と自分の分の酒を買った。ここで、「バカだなあ、どうしてその女の子たちの酒を買わないんだよ」と思う人もいるかもしれない。実は、まったくそのことに思い至らなかったのだ。

 女の子たちは20代の初めから半ばぐらい。顔はあまり覚えていない。千葉出身なせいか、千葉ロッテマリーンズのファンらしい。プロ野球のことなら僕でも話ができる。でも2005年の阪神とロッテの日本シリーズの話なんかしてもきっと盛り上がらないだろうなと思って、僕は黙った。なにせ僕は退屈な男なのだ。

 でも、その女の子たちはその日声をかけた相手の中で一番話しやすかった。心中でどう思っていたかはわからないが、少なくとも「酒場にいるんだから、まともそうな相手なら普通に会話ぐらいはしてあげる」という気概を感じた。ケヴィンが片方の女の子にベタベタと触れるのにヒヤヒヤしながらも、“次の店に一緒に行こうぐらいの流れにはなるのかな。ていうかこの子たちいくつぐらいなんだろう”と僕は考えていた。

 しかし、この2人との会話も長続きはしなかった。ケヴィンがベタベタ触っていたほうの女の子が「私風邪をひいていて」というカマキリでも見破れそうな口実を言って、ハンドバッグを手に取る。もちろん千葉ロッテファンの女の子もそれに従う。ケヴィンは「じゃあ最後にハグをしよう」と言い出した。わけもわからず僕は風邪をひいている(とカマキリでも見破れる嘘を言っている)ほうの女の子とハグをした。お互いの身体に触りすぎないようにする、不器用な接触。俺は一体何をやってるんだろうと思った。千葉ロッテファンのほうはケヴィンのハグを華麗にスルーした。

 いつの間にか23時近くになっていたが、ケヴィンはまだ諦めていなかった。センター街の入り口で中学生みたいな女の子に声をかける。さすがについていけなくなったので、僕は帰ることにした。

「もう帰るよ、楽しかった」と僕は言った。もちろん嘘だ。疲れただけだ。ケヴィンは「もっと自信を持って人生を楽しんだほうがいい」と助言してくれた。大きなお世話だよ。

 しかしケヴィンと別れたあと、思いもよらぬことが起きた。HUBで出会った2人組のうちの千葉ロッテのほうと、自分の家の最寄り駅でばったり出会ったのだ。

「家は千葉なんじゃ?」と言うと、彼女は「実家は千葉なんだけど、ここで1人暮らししてて」と答えた。僕はなじみのバーに彼女を誘い、ニューアカデミズムとマジックリアリズムについて小一時間語った。そして僕の部屋でむちゃくちゃセックスした。

 最後の部分を除き、ここに書いたことはすべて実際に起こったことだ。最近の僕は、なるべく外国人に話しかけられないよう気をつけている。でも別にそれは人種差別的な意味ではない。