ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

見ず知らずの外国人と一緒にナンパするはめになった話(前編)

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 恵比寿近くの道路を歩いていたら、外国人に声をかけられた。白人で、歳は僕と同じぐらい。

 前日、僕は鎌倉の稲村ヶ崎でも白人カップルに声をかけられていた。「稲村ヶ崎温泉はどこにありますか?」と聞かれたのだが、幸い稲村ヶ崎温泉はすぐそばにあったので、なんとなく身振り手振りで案内することができた。

 僕はなぜか外国人によく声をかけられる。彼らがどういう基準で声をかける人を選んでいるのかはわからないが(あるいは基準などないのかもしれないが)、「この電車は横浜まで行くのか」とか、六本木ヒルズで「このあたりで、何か見物すべきものはあるか。カラオケはどこにあるのか」とか、答えやすいものから困惑してしまうものまで色々な質問を受ける。

 恵比寿で会ったその外国人は、「コインランドリーを探している」と言った。幸い、彼はかなり日本語を話せた。僕は比較的平易な文体の英語を読むことはできるが、会話はほとんどできない。

 僕は「コインランドリーならホテルにあるんじゃないですか?」と言ってみた。日本語は話せても日本に住んでいるという風には見えなかったので、ホテルに泊まっているのだろうと思ったのだ。恥ずかしながら僕は1人でホテルに泊まったことがない(関係ないけどラブホテルにも行ったことがない)ので、そのへんの勝手はわからないのだが、コインランドリーぐらいはあるだろうと考えたのだ。でもその白人男性いわく、「聞いたんだけどないと言われた。信じられない」ということだった。

 そして、彼は折りたたんだ紙切れを取り出し、ここにコインランドリーがあると言った。それは、僕が渋谷から恵比寿まで歩いてきた道のりの途中にあった。暇だったので、僕はそこまで案内をすることにした。外国人に道を聞かれると大体いつもこうなる。渋谷の西口の歩道橋でアジア人の女の子2人に「ハチ公はどこ?」と声をかけられた時もこうだった。

 歩きながら、僕は「日本には仕事で来たんですか?」と聞いてみた。違う、ということだった。
「じゃあ観光?」
「違う。説明が難しい」

 無理に聞こうとも思わないので、僕はそれ以上は何も言わなかった。そしてコインランドリーにたどり着いた。彼が「時間ありますか?」と言うので、「ありますよ」と答えた。本当は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」実写ドラマ版を家で見ようと思っていたのだが、録画予約をしてあるから無問題だ。それに、その時の僕はその白人男性に対して好奇心を持っていた。

 洗濯が終わるまで、僕等は近くの道をぶらぶらと歩いて話をした。彼は唐突に「恋人はいる?」と聞いてきた。もちろん答えはノーだ。
「どうして?」
「どうしてって……いないからいない」
「なぜ作らない?」
「作ってもいいけど、いろいろと面倒だし作れないから。僕はモテないし」

 そう答えると、彼は「ワケガワカラナイヨ…」という表情を浮かべた。僕はどう答えたらいいものかと困ってしまった。

「これまではいたの?」と彼は質問を変えてきた。
「まあいたけど、別れた」
「どうして?」
「例えば……便座の蓋っていうのはわかる?」
「わかる」
「あれを下ろし忘れるとね、彼女がものすごく怒った。それで、僕も謝っているのに彼女がしつこく『どうしてできないの』って言うからいつもケンカになった」

 その白人男性はまた「理解できない」という顔をした。確かにそれはそうかもしれない。僕も、話しながら「そもそもどうして俺たちは別れたんだっけ?」と考えこんでしまった。便座の蓋問題というのは、僕と当時の恋人との間に起きた多くの諍いの1つでしかなかったのだが。

 ともあれ、その白人男性は「なんとなくわかってきた。とりあえず確かなのは、その彼女が間違っているということだ。非寛容的すぎる」みたいなことを、日本語と英語を交えて話した。

 どうして俺は見ず知らずの外国人に自分の元恋人との便座の蓋問題を話しているのだろうと思い、「日本にはいつからいるの?」と聞いてみた。
「半年ぐらい前」
「(結構いるんだな……)どこから来たの?」
「ニューヨーク」
「いつ帰るの?」
「2ヵ月後ぐらい」
「(結構いるんだな……)」

 そうこうしているうちにコインランドリーでの洗濯と乾燥が終わった。彼は「これからちょっと遊ばない?」と言った。怪しむところなのかもしれないが、好奇心が勝ってしまった。僕は「いいよ」と答えた。

 そして、彼が洗濯物を自分の部屋に持って帰るのを小さなホテルのロビーで待った。

 再び合流すると、彼は「どこに行きたい?」と言った。でも僕には特に行きたいところなんてない。とりあえず渋谷に出ようということになり、僕等は駅に向かった。ケヴィンという名の(そのときになってようやく僕は彼に名前を聞いたのだ)彼はこう言った。

「女の子を見つけよう。こっちが2人だから、2人連れの女の子を見つけて声をかけるんだ。きっとうまくいくよ」

 こうして、その奇妙でさえない一夜は始まった。

(つづく)