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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

『コングレス未来学会議』を観た

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The Congress/イスラエル、ドイツ、ポーランド、フランス、ベルギールクセンブルク/120分

監督:アリ・フォルマン
原作:スタニスワフ・レム
脚本:アリ・フォルマン
撮影:ミハウ・エングレルト
音楽:マックス・リヒター
出演:ロビン・ライトハーヴェイ・カイテルポール・ジアマッティ ほか

 この映画、かなり前に観たので結構うろ覚えなんですが書いちゃいます。

 監督は『おくりびと』とアカデミー外国語映画賞を争った『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン。結果的に『おくりびと』が受賞したわけですが、同作に出演していた本木雅弘は「確実に『戦場でワルツを』が受賞すると思っていた」と発言してました。

 僕はBlu-rayで観たのですが、確かに『戦場でワルツを』は大傑作でした。画作りから音楽のチョイス、そして最後のアレまで何から何までツボ押されまくりで、それ以来このアリ・フォルマンのことは気になっていたのです。

 今回の『コングレス未来学会議』は、フォルマン自身の体験をもとにした『戦場でワルツを』とは違って、SFっぽい話です。

 舞台は架空の2014年で、ハリウッドは俳優の全盛期の容姿をデジタルデータ化して、それをもとに映画を作っています。主人公はロビン・ライトで、この人はもともとショーン・ペンの奥さんですね。で、ロビン・ライトは役名もそのままロビン・ライトです。彼女もまた「データ取らせてくんね?」と依頼を受けます。最初は躊躇していた彼女ですが、難病の息子のために結局は同意します。

 それから何十年か経つと、途端に映画はそれまでの実写からアニメパートに移行します。そして、かなりクセのある世界観とキャラクターデザインのもとに、あぶないクスリでもキメてるみたいな映像が展開されます。この世界では、人はみな「本当の自分」というものから解放され、「なりたい自分」になることができます。それは薬物による仮初めの世界なわけですが、そのことに疑問を呈する人はほぼいません。

 そしてここからはっきり覚えてないんですが、ロビン・ライトは夢なのか現実なのかわからないような世界を行ったりきたりします。そして、息子に会いたいという気持ちから、とある行動を起こします。

 結果的にどうなるかというのは書けませんが、ある事実が明らかになった時、実はこの映画は前作『戦場でワルツを』と少し似ているのかもしれないと思いました。『戦場でワルツを』には現実からの逃避というテーマがあったように感じましたが、本作でもそれは同様です。多くの人々は事実を見ないように逃避し続けます。ですが、ロビン・ライトはあえて現実を追求します。過酷な現実が待っていることも厭わず。

 ただし前作と本作には大きな違いがあって、『戦場でワルツを』が「真実が明らかになった→マジかよ→絶望的余韻」で終わるのに対し、『コングレス未来学会議』にはほのかな希望が見えるところです。『戦場でワルツを』にはアリ・フォルマンの贖罪意識が働いていたように思えます。だから、あのようにぶつ切りで終わってしまう。でも今回は、ある事実が発覚しても、主人公が立ち止まらない。彼女は絶望の先に手をのばそうとします。『コングレス未来学会議』は愛の物語になっているのです。そこが『戦場でワルツを』とは大きく違う点です。

 ハリウッドスターの容姿をデータ化してるので本人は映画に出なくてもいいとか、途中で出てくる大企業の社長がビル・ゲイツとスティーヴ・ジョブズを合わせたような見た目をしているとか、いろいろ皮肉めいた部分は多いのですが、この映画はとてもロマンティックな作品です。絶望の先に手を伸ばすロビン・ライトと、自身の古傷(とてつもなく大きな古傷)に触れてしまっても創作を続けていくアリ・フォルマンの姿がダブって見えるのです。

 

プレミアがついていた原作の改訳版。

 

戦場でワルツを 完全版 [Blu-ray]

戦場でワルツを 完全版 [Blu-ray]

 

絶対観ておいた方がいい傑作。

 

Congress

Congress

 

サントラ。前作同様マックス・リヒターが劇伴を担当。