読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第86回「『セッション』を観た」

f:id:q050351:20150420081410j:plain
Whiplash/アメリカ/107分

名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。(オフィシャルサイトより)

 TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。

 日本公開決定前から楽しみにしていた本作ですが、期待を裏切らない傑作でした。もともと僕はJ・K・シモンズという俳優が好きでして、サム・ライミ版『スパイダーマン』3部作とか『JUNO/ジュノ』とか、脇役なんですけどやけに存在感がある人だなあ、もっと主役級をやっても良さそうなのに、と思っていたんです。そして今回、アカデミー賞助演男優賞受賞。これを機にもっともっと脚光を浴びてほしいですね。日本だと夏公開のターミネーター新作に出ているようです。ターミネーター役ではないようですが。

 さて、『セッション』ですが、前半は『フルメタル・ジャケット』の前半そのものです。ハートマン軍曹ほどヴァリエーションは多くないものの、フレッチャーの生徒に対する罵倒はほぼ軍隊。

 フレッチャーが本当にただのサディストなのか音楽への情熱に満ちた人間なのかは微妙にぼかされているというか、どっちにも取れるようにできていると思います。ネタバレになるので言えませんが、僕は終盤のある展開でまんまと「えっ」と思ってしまいました。鋭い人は「やっぱそうか」と思うんでしょうけど、僕は主人公ニーマンとほぼ同じように「えっ」と絶句してしまいました。「マジかよ…!」と。

 ただ、この後のラストへ向かう疾走が凄いんです。本当にあったことなのかどうかもわからないような、まるで麻薬を打った(打ったことないけど)ような昂揚感で全身が総毛立ちます。こういう体験は映画ではあまり感じたことがなくて、でもどこか違う分野で経験がある。なんだろう。と考えていたら、それはフジロックとかで感じた、ライヴに対する昂揚感なんですよね。演奏がうまいのか下手なのかはよくわからない、でも今俺は何か凄いものを目撃している、という感覚。

 そもそもこの映画は最初から最後まで緊張感が途切れないんです。良い映画でも悪い映画でも必ずどこかで少し物語が落ち着くものなんですが、『セッション』はずっとテンションが途切れない感じ。そしてそのテンションが、ラストでさらに加速するんですから。お年寄りが観ると死ぬかもしれません。

 本作を批判する意見があるのは、わからないでもありません。というのは、これはジャズや音楽というよりスポ根映画みたいな話になっているからです。ジャズにしてもロックにしてもクラシックにしても、速く演奏できればいいというものではないし、特にジャズというのは価値観が複雑で入り組んでいるジャンルだと思います。だからクラシック同様めんどくさい人が多い(偏見)。

 そこまでめんどくさい人かどうかはともかく、日本の某ミュージシャンの本作への批判はうなずける部分もあれば首をひねる部分もあって。要するに、「ジャズ映画」と思って観たら批判したくなるんです、絶対に。「ジャズはこんな音楽じゃない」って怒る人がいるのもわかります。これがたとえばロックだったら、とんでもない速弾きができるギタリスト=最高のギタリストみたいになってしまって、そうなると北欧のあのデブが素晴らしいってなことになりかねない。

 でも基本的にジャズを聴かない僕は、この映画を「音楽を絡めた狂気の物語」として観ることができたので、傑作だと思っちゃうわけです。例えばジャズじゃなくてもいいんです。キャベツの千切りを極めるとんかつ屋の見習いの話でもいいんですよ。

「刻んでみろ」
「はい」トントントン
「待て、太い」
「はい」トントントン
「待て、今度は細すぎる」
「はい…」トントントン
「違う!今度は太い!俺がトンカツの付け合せに食いたいのはこんなキャベツじゃない!
(ガッシャーン!とトンカツを揚げる鍋がぶん投げられる)

 みたいなやり取りでもいいんですよ。たまたま今回はキャベツじゃなくてジャズだっただけで。

 何かを極めるということは、それだけ狂気に近づくということなんです(多分)。ある人にとってはそれがジャズドラムであり、ある人にとってはキャベツの千切りであり。だから何かの道を極めた人はみんなどこかしら変です。その変さのベクトルは違えども。僕は微妙に変で、そのくせ何も極められないという、社会では一番ダメなパターンですが。

 それにしても主人公の父親を演じていたポール・ライザー、老けたなあ。誰? って人もいるかもしれないけど、『エイリアン2』に出てたあの人ですよ。今回はいい人だったけど。

 ところで、今放送してる京都アニメーションの『響け!ユーフォニアム』っていうアニメは吹奏楽部を舞台にしてるんですけど、コラボとかしたら面白いんじゃないでしょうか。可愛い女の子たちが演奏するとフレッチャーが出てきて、

吹奏楽部の演奏「(ぼえー)」
フレッチャー「走ってるな」
吹奏楽部の演奏「(ぼえー)」
フレッチャー「モタってるな。もう一度」
吹奏楽部の演奏「(ぼえー)」フレッチャー「違うな」
吹奏楽部の演奏「(ぼえー)」
フレッチャー「Not my fuckin' Tempo!!!!!!!!!!!!

 誰かMAD作ってくれよ。滑っても俺のせいじゃないけど。

 

セッション

セッション

 

↑ジャズマニアがどういうのかは知らんが身体が動きまくる。なんとなくジョン・ステニアーのドラムが聴きたくなって久々にBattlesを聴いちゃった。

 

J・K・シモンズが新聞紙の編集長役で登場。

 

↑アニメの影響で品薄の模様。