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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第66回「『ジャッジ 裁かれる判事』を観た」

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製作国:アメリカ
原題:The Judge

監督:デヴィッド・ドゥブキン
脚本:ニック・シェンク、ビル・ドゥビューク
撮影:ヤヌス・カミンスキー
編集:マーク・リヴォルシー
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ロバート・ダウニー・Jrロバート・デュヴァルヴィンセント・ドノフリオ、ヴェラ・ファミーガ、ビリー・ボブ・ソーントン ほか

母の葬儀のため久々に帰郷したヤリ手弁護士のハンク・パーマー(ロバート・ダウニー・Jr)。地元で長年判事を務め、人々の尊敬を集める父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)とは折り合いが悪く、現在はほとんど絶縁状態。葬儀が終わり、早々に引き返そうとしていたハンクに思いも寄らぬ一報が入る。なんとジョセフが殺人の容疑で逮捕されたというのだ。ところがジョセフはハンクの弁護を拒絶してしまう。それでも、頑固に正義を貫いてきた父に限って殺人など犯すはずがないと確信していたハンクだったが…。

チネチッタにて鑑賞。

 本作、ロバート・ダウニー・Jr(以下RDJ。Richard D. Jamesではありません)とその奥さんスーザン・ダウニーの制作会社「チーム・ダウニー」の1作目だそうです。

 そのせいなのか、これまでコメディを多く手がけてきたデヴィッド・ドゥブキンが監督を務めているせいなのかはわかりませんが、法廷ドラマでありながら随所にユーモアが挟まれていて、肩の力を抜いて見ることができます。「お前法廷ドラマは初めてか? 力抜けよ」とRDJに耳元で囁かれている感じ。と言えと言われました。

 映画内ではRDJの役名が「ハンク」だったり「ヘンリー」だったりします。「ハンク」は「ヘンリー」の愛称なんだそうです。ちょっとこのあたりややこしいですね。ベッキーが「元気の押し売り」と呼ばれるようなものです。全然違いますが。

 「法廷ドラマ」と書いておいてなんですが、確かに法廷ドラマ的部分もあるんですけど、実際には家族もの、もっといえば「父子ドラマ」です。

 ロバート・デュヴァル演じるジョセフ(この役でアカデミー助演男優賞ノミネート)は、『グラン・トリノ』の主人公ウォルト・コワルスキーを思わせる融通の聞かない頑固親父です。対してRDJ演じるハンクは、『アイアンマン』のトニー・スタークを思わせる「有能だけど浮わついた」息子です。いわば水と油なわけで、この二人が衝突するのも必然です。さらに、映画が進むにつれこの父子の不和を決定的にした過去の出来事も明るみに出ます。

 でも、なんだかんだいってジョセフの弁護をするハンク。自分の評判に傷がつくかもしれないという懸念もあったろうし、他の家族(長男と三男)のためというのもあるし、最初は父親のために、という考えはなかったかもしれません。大体、当のジョセフ本人が「お前の弁護はいらない」って言うんですから。おまけにハンクの弁護を受け入れてからも、事あるごとに自分にとって不利になるようなことを言うし。

 それでもジョセフを突き放せないハンク。きっとそれは、父と疎遠になったことについて、自分自身にも原因の一端があるとわかっていた(けど認めたくはない)からでしょう。それに、ハンクが弁護士という職業を選んでいること自体、長年判事を務めてきたジョセフを父として(「対抗」という意味であっても)意識していたことの証です。このあたり、矛盾しているのですが、息子の中では父にたいする敵意と敬意が混在しているのです。僕もまた父を持つ「息子」の一人なので、なんとなくハンクの苛つきがわかるような気はします。

 こうした父子ドラマと法廷ドラマの割合が半々のまま物語は進んでいくのですが、この映画が面白いのはクライマックスで父子ドラマの成分が「客観性」を主軸に展開する法廷ドラマの成分を一気に飲み込むような作りになっていることです。考えようによっちゃ少し強引にさえ思えるこのシーンも、名優ロバート・デュヴァルの説得力ある演技と存在感を見せられると「そういうものなのかもな」と思ってしまいます。だてに40才以上年下の嫁さんもらってません。関係ないけど。

 他にも、『フルメタル・ジャケット』の微笑みデブでお馴染みヴィンセント・ドノフリオが至ってまともな役を丁寧にこなしていたり(突然錯乱して銃を乱射しないか不安だったけど)、RDJと戦う検事をビリー・ボブ・ソーントンが演じていたり、とにかく役者陣の演技だけでも脳汁出まくりです。

 撮影はスピルバーグの作品でお馴染みヤヌス・カミンスキーが担当していて、そのせいかフィルムで撮られています。これがまた非常に良いあんばいで、現状のデジタルではちょっとこの質感(特に粒状感)は出ないんじゃないでしょうか。この映画の作風にもマッチしていたと思います。

 音楽もボン・イヴェールの曲が効果的に使われていて、エンドロールではウィリー・ネルソンによるコールドプレイのカヴァー「ザ・サイエンティスト」が流れます。こんなカヴァーがあることは全然知りませんでした。

 難点を言えば、2時間超えはちょっと長過ぎるかなと思ったこと。そもそもヴェラ・ファーミガ(役作りなのかどうなのかわからないがやけに肥えた)との絡みとか必要あったんですかね? まあこの映画は、ハンクが、ジョセフだけでなく自分が捨ててきた故郷や過去とも対峙するということもテーマとして扱っているので、絶対必要無い!とは思わないんですが。

 でも、法廷ものって暗くて難しくって苦手と敬遠してる人には観てもらいたい一作です。特に、「父親」である人、「息子」である人には。