ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第62回「『FORMA』を観た」

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監督・原案:坂本あゆみ
脚本:仁志原了
撮影:山田真也
出演:松岡恵望子、梅野渚、ノゾエ征爾、光石研、仁志原了

9年ぶりに再会した高校の同級生、綾子(梅野渚)と由香里(松岡恵望子)。工事現場で警備員をしていた由香里を、綾子は自分が勤める会社に誘い、一緒に働くようになる。しかしやがて、綾子は由香里に対して冷たい態度を取るようになる。そんな彼女の不可解な言動によって由香里は次第に追い詰められていくが…。(allcinemaより)

 ずっと気になっていたこの作品、渋谷アップリンクの「見逃した映画特集」というありがたい企画のおかげで鑑賞することができました。

 監督の坂本あゆみさんは元々塚本晋也監督に師事していた人だそうです。彼女のプロフィールを見ると、同様に塚本監督に師事していた吉田恵輔監督の『なま夏』に出演されていたり、塚本監督の『悪夢探偵2』で照明を担当されたりしています。

 脚本は仁志原了さんで、この人は吉田恵輔監督との共同脚本でお馴染みの方ですが、今回は出演もされています。

 さて本作ですが、観てすぐに連想したのはミヒャエル・ハネケです。少し遠目に撮った長回しの冷徹な視点とか、盗撮的に撮られたビデオ映像の作中での扱われ方なんかを見ると、『隠された記憶』を思い起こさせるものがあります。

隠された記憶 [DVD]

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 実際坂本監督は影響を受けた監督でハネケの名前を挙げていますし、この『FORMA』の中でも、由香里の部屋(実は坂本監督自身の住んでいる部屋らしい)にハネケのDVDボックスが置いてあります。

 

 由香里のようなタイプの女の子がハネケのDVDボックスを持っているかどうかは微妙ですが、まあ元々割りと陰のあるキャラっぽいしそんなにおかしくもないのかな。
 坂本監督は、他にアッバス・キアロスタミなんかもフェイヴァリットとして挙げています。

 この作品、元々の録音ソースがそうなのかアップリンクの劇場の仕組みのせいなのかはわからないのですが、非常に音声が聞き取りづらいです。特に前半はかなり台詞を聞きこぼしたので、観ていて不安になりました。ちょっとした会話の細部等を聞き逃すと致命的なタイプの映画かと思っていたからです。

 ところが後半になると、それは杞憂だということに気づきます。時系列をバラバラにしているのでやっぱり混乱するんですが、大まかな流れは僕のアホな頭でも理解できました。こうなると、前半の台詞の聞き取りにくさはそれほど問題ではなく、もしかしたら意図してのものであったかと思うぐらいです。

 ネタバレになるのであまり細かいことは言えませんが、

という意見があるように、2度鑑賞するといろいろな発見がありそうです。例えば綾子が父親の洗濯物を「汚い」と言うところとか。この「汚い」の意味は、鑑賞後に「なるほどそういうことか」と思わされる「汚い」でした。僕もよく女性に「汚い」「ウザい」「キモい」「可及的速やかに死んで欲しい」と言われますが、ここでの綾子の「汚い」はもっと深刻です。

 この映画の最大の見所はやはり終盤の20分を超える長回しワンカットシーンなのですが、それまで水平をとって撮影されていた映像が、少し斜めっています。斜めっている理由はある種のリアルさを醸したかったからとも思えますが、バカなりに深読みすると、これは、このシーンで登場人物たちの立っている世界が一気に傾いてしまったことの暗喩なのかもしれません。

 そしてここで吐露されるある事実ですが、これが真実なのかどうかはわかりません。まあこれはクロかなあ、とも思うのだけど、断定はできないです。クロに近いグレーぐらいでしょう。このあたりの曖昧さもハネケっぽいかも。

 『父の秘密』を挙げて本作を語っている方もいました。そういえばあの作品もカメラと対象との距離に独特の冷たさがありましたね。

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 ただし、ハネケやキアロスタミ、『父の秘密』と比べると『FORMA』はそこまで対象物を突き放していないというか、嫌な意味で(批判的な意味ではないです)熱いのです。

 それは主人公二人の、いかにも女性らしい生々しくて「あるある」なやり取りです。確かに笑えるシーンでもあるのですが、同時にキ○タマが縮む思いで眺めずにはいられません。笑いながらキ○タマが縮む様を、顔とキ○タマの2画面分割で同時に観察するのもまた医学的見地から見て興味深いのではないでしょうか(完全に意味不明)。

 考えてみると、昨年末にも女性恐怖症に陥りそうな映画を観ているわけで、冷静に考えれば「こんな女いねーよ」な女の子が主人公である『たまこラブストーリー』に異常にハマっているのは「女の現実」という猛毒(ひでえ言い方だ)を中和するためなのかもしれません。

 それにしても由香里を演じた松岡恵望子さんは個人的にツボでした。彼女が画面に登場する度キュンキュンしてしまって、「綾子てめえこのスーパーサイコビッチがあああ」といとも簡単に由香里に肩入れしてしまいました。ああいう外見の女の子には、僕のような単純バカはすぐコロッといってしまいます。恐らく監督はそのあたりも熟知していて、髪型やスタイリング等も指示していたんじゃないでしょうか。

 エンドロールには全く音楽が無くて、このあたりもハネケっぽかったです。ラストカットのあと画面が暗転した時にゾッとしたんですが、この点においては昨年末観た「ある映画」と同じです。

 細かいところで気になるのは、「主任」程度の綾子が、人出が足りているはずの会社に由香里を入社させられるところですかね。あと、「鍵が開いてた」っていう、あそこもちょっと不自然かな、と…。

 でもまあ、最後まで観終わってしまえば、

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と開き直れるぐらいの傑作ではあると思います。

 こういう作風の若手監督って日本では出てきそうで出てこなかったので、坂本あゆみ監督が今後も作品を撮り続けられればいいなと思います。断然応援します。それから松岡恵望子さんが超好きです。

 あ、それと! 映画自体には音楽が全く使われていないのだけど、アップリンクで上映前に流れてた不穏なインストが誰の楽曲なのかご存知の方は教えてください!


綾子のこの部屋着、リアルだなあ…。