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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第43回「『ゴーン・ガール』を観た」

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原題 Gone Girl

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作・脚本:ギリアン・フリン
出演:ベン・アフレックロザムンド・パイクニール・パトリック・ハリス ほか

ニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)は誰もがうらやむ夫婦のはずだったが、結婚5周年の記念日に突然エイミーが行方をくらましてしまう。警察に嫌疑を掛けられ、日々続報を流すため取材を続けるメディアによって、ニックが話す幸せに満ちあふれた結婚生活にほころびが生じていく。うそをつき理解不能な行動を続けるニックに、次第に世間はエイミー殺害疑惑の目を向け……。

※微妙にネタバレ…かもしれません。神経質な人は読まない方がいいです。

 チネチッタにて鑑賞。

 観る前から「ブラック・コメディー」という情報は得ていて、確かにところどころ「笑うところなんだろうな」と思わせる部分はありました。実際、アメリカ本国では劇場で爆笑が起きていたなんて話も聞きましたし。

 ただ、個人的には「爆笑」とまではいきませんでした。少しニヤリとする程度でしょうか。映画館の暗闇の中でならいくらニヤニヤしても誰にも咎められないので、存分にニヤニヤしました。

 例えば、妻・エイミーが失踪したことで「有名人」になったニックと一緒に写真を撮りたがるバカ女が現れて、うっかり笑顔で写真に収まってしまい、「シェアしないで!」と言うところとか。後でその写真はしっかり世間に晒されてしまうわけですが。

 映画の中で終始ニックは翻弄されます。エイミーの失踪、それに伴う世間の目、それから…以降はネタバレになるので書きませんが。で、この翻弄されるニックを演じるベン・アフレックが妙にハマっています。これまでの彼のキャリアの中で一番本人に近いのではないかというぐらい。

 最近は監督として評価が高く、実際は頭もキレる人なんでしょうけど、彼ってどうしてもバカに見えるんですよね。かといってムカつくタイプではなくて、「でくのぼうだけどなんか許しちゃう」っていうか。本作では役作りなのか単なる不節制なのか、妙に太って見えたことも余計に「バカっぽそう」という印象に拍車をかけていました。

 この映画の中で演技力という意味で絶賛されるのは間違いなくロザムンド・パイクだと思うのですが、「そこにいるだけで説得力がある」のはアフレックの方でしょう。「出てるだけで映画が締まる」という俳優が映画界には存在しますが、彼は「出てるだけで映画が緩む」んです。まさに便・溢れっ苦。そして、その緩みが映画を台無しにしているわけではないのだから、これはキャスティングの妙なのかもしれません。

 キャリア初期に出ていた『チェイシング・エイミー』(奇しくも、「エイミーの追跡」ってタイトル)でも絶妙に情けない役をやっていて、本当はこの人ってかっこいい役は似合わないんだと思います。監督を務めた『ザ・タウン』も『アルゴ』もなんかもうひとつハマれなかったのは本人が割りとかっこいい役で主演してたからかもしれません。

 悪口を言ってるようですが、全然嫌いじゃないんですよ。不思議な俳優だなっていうことが言いたいのです。本当はロザムンド・パイクについてもっと書いた方がいいのでしょうけど、ネタバレにつながりそうだし。

 今回も音楽をトレント・レズナーアッティカス・ロスが担当していますが、この二人が手がけてるだけあって音楽は常に不穏なトーンです。何気なく環境音みたいなノイズを散りばめていて(よく聴くと実は一定のリズムで鳴っている)、サラウンドで聴くとそれが音楽の一部なのか劇中の音なのか、はたまた劇場内の音なのかすら一瞬わからなくなって、不気味でした。サントラ、ちょっと欲しいです。

 全体的には「面白かった!」というより「変な映画だった」という印象です。「ダメ」ではないけど「変」です。「サスペンス」「コメディ」のどっちにもはっきりと転ばないため、どちらか片一方を思い切り期待して観に行くと「中途半端」に見えるかもしれません。例えばデヴィッド・フィンチャーの出世作『セブン』みたいな話を期待すると肩透かしを喰らいます。

 筆者としては、最近結婚した友人夫婦にすすめたくなる作品でした。文句を言われたら「節子、これコメディーや」と言い訳しようと思います。間違ってはいないと思うし。

 

追記:「嫁(もしくは恋人)がいなくなる」っていう話は村上春樹の小説にもぽつぽつ出てきますが、原作ではエイミーが『ねじまき鳥クロニクル』を読んでいるシーンがあるそうです。村上作品では、失踪を機に、夫が理解していると思っていた「妻」のことをちっともわかっていなかったと気づいたりするわけですが…。原作小説はある意味で村上作品への回答なのかもしれません。適当なこと言いました逃げます!

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Gone Girl

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