読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第41回「『超能力研究部の3人』を観た」

f:id:q050351:20140829195224j:plain

監督:山下敦弘
原作:大橋裕之(『シティライツ』)
脚本:いまおかしんじ向井康介
出演:秋元真夏生田絵梨花橋本奈々未碓井将大 ほか

北石器山高校の“超能力研究部”に所属する育子、良子、あずみの3人は、真剣に超能力を研究しているクラスのはみ出し者。日々の努力の甲斐もなく、一向に超能力が身につく気配はなかった。そんなある日、同級生の森が易々とスプーンを曲げているのを目撃し、強引に入部させる3人だったが…。(allcinemaより)

※少しのネタバレあります

 チネチッタ川崎にて鑑賞。

 新作が公開されたら必ず観に行く山下敦弘監督の作品ですが、予想以上に面白かったです。最近2014年公開映画のランキングを考えていて、日本映画の1位は『たまこラブストーリー』かなと思っていたのですが、本作も捨てがたいです。

 上にあらすじを転載していますが、これ、殆ど意味がないです。というのはこの映画、『超能力研究部の3人』という映画を撮影しているメイキング映像も含めて1本の映画として成り立っているからです。いわゆるメタ構造ってやつですね。

 構造としては基本的に、完成形の『超能力研究部の3人』本編、それからそのリハーサルと称して舞台風セットで芝居したものを収めた映像、それから映画本編の撮影のメイキング、この3つで成り立っています。そして、この3つがめまぐるしく入れ替わるので、今自分が観ているのがフィクション部分なのかドキュメンタリー部分なのかわからなくなってくるのがこの映画の一つの持ち味だと思います。

 特に序盤はその境界線が曖昧です。山下監督の演技指導がなんとなくイメージより厳し目な気がして、「あれ、この人もうちょっとふわっと演出するかと思ってたけど…」などと思いながら観ていました。もしかしたらこの演出場面自体が嘘なんじゃないかと…。

 育子役の生田絵梨花さんが好きな男の子を電柱の陰からそっと見守るシーンでは、山下監督は「今どういう気持ちで見てた?」と詰問します。少し緊張感があって、まるで自分が監督に詰問されているような気がしてきます。短編映画制作に関わった時こういう場面を見たことがあったので、「あ〜あるある」と思わずにいられませんでした。

 で、この映画最初の山場があるんですが、それは秋元真夏さん演じる良子が田舎DQN女どもと対決する場面のメイキング映像です。

 山下監督は秋元さんの演技に納得がいかず、「怒ってるように見えない」とダメ出しをします。実際、ここでの彼女の演技はあまりにもふわふわしていて弱々しいです。何度かリハを繰り返しますがうまくいかないので、一旦休憩が入ります。秋元さんは泣き出してしまいます。

 そして、山下監督の一考で、DQN女を演じる女優たちに「良子」ではなく「秋元真夏本人」への口撃をしてもらうことにします。これが凄い。

「おめー何回やったらできんだよ」「アイドルつっても歌もダンスもヘタじゃん」「ブス」みたいな、見ていてこっちが辛くなってくるような口撃の応酬。秋元さんはそれにも泣き出しそうになりながらなんとか抵抗します。観ていてハラハラします。女性の悪口ってどうしてあんなにグサグサくるんでしょうか。

 口撃されてんのは秋元さんなのに、まるで俺自身が「おめーどんだけ低収入なんだよ」「つまんねーブログ書いてんじゃねーよ」「36にもなってキスもセックスもヘタじゃん」「早漏」「可及的速やかに死ね」と言われている気がして「やめて、もうやめて!」と口をパクパクさせてしまいました。

 ところがここで、初めてこのメイキング映像がフィクションぽさを帯びる場面があります。DQN女に言い返す台詞をその場で考えていて、あずみ役の橋本奈々未さんが「『クソゲボヤロー(ちょっと細かい台詞失念。間違ってるかも)』って言ったら?」と提案し、山下監督もそれを採用しようとします。すると、それまで撮影を傍観していた女マネージャーが「ちょっと待ってください、クソ…何ですか?」と、突然割り込んできます。山下監督が「いや、クソゲボ…」というと、マネージャーは「そんなの言わせられませんよ」と言います。この、気まずくて、でも滑稽で笑える空気感。向井康介氏と組んだ山下監督作品にはよく見られるユーモアです。

 で、この後無事このシーンは成功するんですが、一体どこまでが本当だったの? と考えてしまいます。マネージャーが割り込んでくるとこは明らかにフィクションなんですが、秋元さんが追い詰められて泣いたりするシーンは本当のメイキングに見えたのです。それも含めて全部演出なのでしょうか?

 この他にも、学校ロケの合間にピアノを弾く生田さんが、森岡龍(彼は監督としても『ニュータウンの青春』などで評価されています)扮するメイキングディレクターにインタビューを受けるうちに泣き出す場面があります。ここはかなり自然な雰囲気で泣き出すので、それほど女優経験のない彼女にこの演技はできんだろうと思うのですが、実際のところはわかりません。後のスナックのシーンで彼女が泣き出すところは演技っぽかったので、インタビューの時は本泣きだと思うのですが…。さすがに、「本泣きっぽい泣き方」と「演技っぽい泣き方」を演じ分けられるほどの実力は現時点では備わっていないはずですし…。

 海での橋本さんについてもちょっと判断がつきかねました。本当に泣いてるっぽかったけど、どうしてここで泣くの? と思ったんですね。でも「どうしてここで泣く?」っていうのが、ある意味ではリアルなんです。フィクションであれば、女の子が泣くシーンがあるならそのための伏線とか説明がないとおかしいんですけど、現実では必ずしもそうではない。だから、こういうこともあるのかなと思わされてしまう。もしあれもフィクションならやられた、という感じ。

 よく考えたら3人とも映画の中で泣いてるんだけど、アイドルを好きな人って実は彼女たちが泣いている姿を見たいという欲求があるんじゃないですかね。応援していながら、彼女たちが落ち込むところも見たい。そういうねじれた愛の形があって、だから熱狂するのではないかと。

 そういう意味で、この映画はそういったねじれた愛の形を組み込んだ変化球的なアイドルムービーとして成立しているのではないかと思うわけです。昨今のアイドルが背負わされる、以前のアイドルには無かったねじれたシステムを、まんまドキュメンタリーではなくメタフィクションという形式で暴いているというか。

 と、わかったような、それでいて全然わかっていないことを書くのも疲れるので、単純に面白かった場面を。

 山下監督作品常連の山本剛史扮するチーフマネージャーが山下監督と言い合う場面はかなり面白かったです。ここでの役名は舟木となっていて、漢字こそ違うものの山下監督の初期作『リアリズムの宿』での山本さんの役名と同じなんですよね。あと詳しくは書きませんがあのパワーウィンドウ…絶妙過ぎて笑いました。

 正直に言って、この作品が乃木坂46のファンにウケるかどうかというのはよくわかりません。映画が好きな人には「観てみたら? 俺は超好き」と言えますけど、やっぱり直球のアイドルムービーではないと思うので。なんかソフト化されないという話が出ている(どういう事情なんだろう?)ので、観るなら映画館に行くしかないかもしれません。とにかく、久々に観ている間にワクワクした日本映画でした。傑作。

 それから乃木坂46のことはこれまで全然知らなかったんですけど。誰も聞いてないけど、声を大にして言いたい。

俺は秋元真夏さんイチオシです!大正義!グレート・ジャスティス!!!!!!!!!!