ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第36回「『君よ憤怒の河を渉れ』を観た」

f:id:q050351:20060719202232j:plain

監督:佐藤純彌
原作:西村寿行
脚本:田坂啓、佐藤純彌
出演:高倉健原田芳雄池部良、中野良子、大滝秀治倍賞美津子田中邦衛 ほか

検事の杜丘冬人は新宿の雑踏で見知らぬ女から「金品を盗まれ強姦された」と告発され緊急逮捕されてしまう。他の男も「カメラを盗まれた」と供述、逮捕に必要な証拠も揃っていた。自分にかけられた罠を取り除くため、現場検証の場から逃走を図る杜丘。女の正体をつかみ彼女の郷里へ向かうが、すでに女は殺されており、杜丘は殺人犯として追われることに。日高山中に逃げ延びた杜丘は、自分をはめた真犯人が政界の黒幕である長岡了介ではないかと思い始める。(allcinemaより)

DVDで鑑賞。

※ネタバレあります。

 高倉健さんが亡くなられた時、自分が『ブラック・レイン』と『鉄道員』ぐらいしか観ていないことになんだか引け目を感じたので借りてきました。本当は『網走番外地』『幸福の黄色いハンカチ』『新幹線大爆破』あたりを借りようかと思っていたのですが、全部借りられていたので、この『君よ憤怒の河を渉れ』(略して「キミフン」)を選びました。

 ちなみに「憤怒」は「ふんぬ」じゃなくてなぜか「ふんど」と読むらしいです。映画のタイトルでもフリガナまでついてるぐらいです。でもその理由は不明です。

 本当は感想を書く気はなかったのですが、あまりにもアレな内容だったので筆(じゃないけど)をとった次第です。

 序盤はまあ特に問題なく進みます。拘束された杜丘たちをいかにも「なんか撮影してる」って感じで見物している人たちががっつり写ってるのはともかく。

 違和感を感じ始めるのは、警察から逃れて(ここもアホらしいぐらい警察が杜撰なんだけど)杜丘(高倉健)が能登へ逃亡するあたりからです。この映画全編でしょっちゅう鳴る、妙に牧歌的で間抜けなBGMが、ただでさえ脆弱な物語の緊張感を完全に削いでしまいます。

 そして、完全に「これは真面目に観る映画じゃないな」と確信させられるのが、日高山中で杜丘がヒロイン(中野良子)と出会うシーンです。女の悲鳴を聞いた杜丘がその方向を見ると、木が揺れています。素早くズームアップすると、木の上にヒロインが登って助けを求めており、その下には荒ぶるクマ(超着ぐるみ)の姿が…!

 杜丘は手に入れていた銃でクマにいきなり発砲、しかし1発ぐらいでは絶命しないクマに追いかけられて、杜丘は川に落ち流されていきます。その後ヒロインに助けられた杜丘は、ヒロインの父(大滝秀治)に、自分が逃走中の身分であることを気づかれます。

 それにしても刷り込みというのは凄いもので、このシーンなど見ていると「健さんと喋っているのは関根勤なのか秀治なのか、それが問題か」と少し悩んでしまいました。これは本物の秀治であると脳が認識した後も、いつ健さんに向かって「つまらん。お前の話はつまらん」と言い出さないか気が気ではなかったです。

 あ、それとヒロインの中野良子ですが、ブス個性的な顔立ちです。以上。

 で、この後、追ってきた刑事・矢村(原田芳雄)に見つかるのですが、すごくタイミング良くクマが再登場します。杜丘が最初に撃った際にちゃっかり芸を仕込んでいたのかというレベルで。クマは矢村の腕をサイドからえぐった後、どっか行っちゃいます。

 矢村が退場すると杜丘とヒロインの濡れ場がありますが、全く色んな意味でぬるい濡れ場です。誰得なんでしょうか。健さんの顔もうつんないし。

 そして、自分が警察に協力したことについて激おこの娘に狼狽した秀治は、「どこも警察が張ってるから、わしのセスナに乗って東京に戻りなさい」みたいなことを、セスナの運転など全く経験のない杜丘に言います。正気かよ秀治。「車よりも運転は簡単だ」って、ホントなの? セスナってそんな簡単なの? そして、警察の追っ手が来たこともあって杜丘はセスナ乗っちゃいます。

 ここもちょっと意味不明だったんですが、なんとか離陸した後に杜丘のセスナは一旦戻ってきて、秀治とヒロインの近くをかすめて通るんですね。普通、飛んでいったセスナを見送る画でしょ? そこは。なんで戻ってくんのかな、運転に不慣れだから方向間違えたとかかな? と思ってたら、また戻って来やがるんです。意味不明すぎ。飛ぶまでにあんな風に行ったり来たりする必要があるんですかね、セスナって。

 で、海に着水して(模型丸出し)東京に戻った杜丘。ここでは都合よく倍賞美津子演じるエロ女に匿ってもらいます。そんなに好みの顔じゃないんだけど、『復讐するは我にあり』といいこれといい、美津子エロ過ぎ。これが本当のミツコ感覚。

 その後色々あり、杜丘は探していた横路(田中邦衛)と再会します。田中邦衛といえば筆者の世代では「北の国から」「食べる前に飲む」のイメージが強いですが、昔は強面役も多かったんですよね。でもこの『キミフン』では終始「食べる前に飲む」モードだったように思います。秀治同様、本当の邦衛なのか邦衛の物真似をしている誰かなのかわからなくなってしまいました。それは一種のゲシュタルト崩壊でした。

 新宿で本物の馬が走るシーンは警察に許可を取らなかったので問題になったそうですが、そんなに必要なシーンだったのかは疑問です。ていうか無茶しすぎだろヒロイン。あんなことしたら余計目立つじゃねーか。馬、コケてたし。あれは多分マジゴケだ。安楽死させられてないことを願う。

 最後は黒幕が判明し、「杜丘は撃ち殺すには惜しい」とかずっとわけわかんないこと言ってた矢村も共闘することになります。

 二人は、韓国に高飛びしようとした黒幕を射殺します。
 
特に矢村は執拗で、もう死んでるであろう黒幕の身体に向けて、リボルバーの全弾が無くなるまで撃ち続けます。やめて!もう黒幕のHPはゼロよ!

 そして、その場に踏み込んできた部下に「正当防衛」と無茶なことを言います。ジジイの身体に全弾ブチ込む正当防衛って、一体何されたんだよって思いそうなもんですが。あんな杖持っただけのジジイに。だって「杖VSリボルバー全弾」だよ? どんな杖だったんだよ。

 というわけで、いちいち突っ込みどころが多すぎる映画だったわけですが、佐藤純彌監督って後に『北京原人 Who are you?』を撮ってる人なんですよね。でも評価の高い『新幹線大爆破』とかもこの人だし、もしかすると敢えてこういうトンデモ演出をしているのかもしれないと思いました。筆者的には、「笑えたからOK」という感じです。健さんがマジメに演じれば演じるほど不憫に見えてくるのはアレですが…。

君よ憤怒の河を渉れ [DVD]

君よ憤怒の河を渉れ [DVD]