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ぼくは性格が悪い

バカのくせに映画の感想とか書くブログ

第15回「残酷大陸桃太郎」

 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。

「おや、これは良いおみやげになるわ」

 おばあさんは大きな桃を拾い上げて、家に持ち帰りました。

 そして、おじいさんとおばあさんが桃を切って食べようとしてみると、なんと中から元気な男の子の赤ちゃんが飛び出してきました。

「これはきっと、神様がくださったにちがいない」

 子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、桃から生まれたその男の子を桃太郎と名づけて育て始めました。

 しかし半年もすると、おじいさんとおばあさんは桃太郎の夜泣きや癇の虫にうんざりし始めました。

 生まれた当初は可愛かったのですが、今では桃太郎の存在が疎ましく思えてきました。子どもというのはこうもままならぬものなのかと、おじいさんとおばあさんは悩みました。二人は桃太郎のことでしょっちゅうケンカをするようになりました。

 そしてそのうち、次第におばあさんもおじいさんも赤子の桃太郎の面倒を見なくなっていきました。ネグレクトです。

 おむつも変えず、食べ物もやらずに、二人は桃太郎を納屋に閉じ込めて「無かったことにしよう」と言い、それからはケンカもせず仲良く暮らしていました。

 桃太郎を納屋に閉じ込めて二週間ほど経った夜のことです。

 眠っていたおばあさんは何かの物音に気づきました。見ると、たくましく育った素っ裸の男の子が戸口に立っていました。

「お前は誰だい?」

「・・・俺の名を言ってみろ!」

 血走った目で、その男の子はおばあさんたちに詰め寄りました。あまりの迫力におばあさんがたじろいでいると、男の子はおばあさんのそばで眠っているおじいさんを片手で持ち上げ、外に放り投げました。

 恐怖に慄くおばあさんに、男の子は再び言いました。

「・・・俺の名を言ってみろ!」

「ま、まさか・・・桃太郎かい?」

 男の子はにやりと笑うと、すぐそばにあったナタでおばあさんの首をはねました。それは桃太郎が入っていた桃を切ったのと同じナタでした。

 鮮血を浴びた桃太郎が振り返ると、外に放り出されて目を覚ましたおじいさんが、腰を抜かして桃太郎の方を見ていました。桃太郎は血に染まったナタを持ってゆっくりとおじいさんに近づきました。

「い、命だけは・・・」

「・・・俺の名を言ってみろ!」

「ひいっ!」

「も、もう少ししたら納屋からお前を連れ出すつもりだったんだあああ」

「・・・俺の名を言ってみろ!」

「うう、も、桃・・・」

「・・・桃?」

「も、もも、た、もも・・・たろわ!

 次の瞬間には、おじいさんは自分の胴体をきわめて客観的な位置から見ることができました。でもそんなモーメントも、すぐに意識が混濁して消えてなくなってしまいました。

 桃太郎は二人の死体を庭に埋めて眠りました。

 翌朝、桃太郎が外に出てみると、見るからに狂犬病という風体の野良犬が一匹、おじいさんとおばあさんの死体を土から掘り起こして食べていました。

 桃太郎はその狂犬を「ケルベロス」と名づけて飼うことにしました。

 桃太郎はおじいさんとおばあさんの死肉をこねて人肉饅頭にしました。すると作業の最中にどこからともなくキジが飛んできて、まだ少し肉が残っている骨をついばみ始めました。桃太郎はキジを人肉饅頭で手懐け、「キジGUY」と名づけて飼うことにしました。

 それからも、その家の近くを通った人間を襲って殺しケルベロスとキジGUYの餌にしていると、ある日一匹のサルがやってきました。やけに腰の低いそのサルは人肉饅頭をもらうと、興味深い話をし始めました。

 海岸からそう離れていない位置にある鬼ヶ島という島で、人間が動物たちを支配下において好き放題やっている、自分の仲間もそこにいるからどうか助けてくださいな、ということでした。

 暇だったことも手伝って、桃太郎はケルベロスとキジGUY、そして「サルトル」と名づけたサルと一緒に鬼ヶ島へ渡ることにしました。

 島に着くと、恐るべき光景が広がっていました。人間たちは動物を飼いならし、将来の食肉として育てているかと思えば愛玩動物として育て、気が向かなくなると捨てて保健所送りにしたりしていました。

 海岸では、生きた猿の頭をかち割って脳みそをスプーンですくって食べている男がいました。リズ・オルトラーニの物哀しい旋律がBOSEのスピーカーから大音量で流れていました。

 桃太郎と3匹の大殺戮が始まりました。女子ども構わず、1人と3匹は「味方以外、動くものは皆殺す」という方針のもとに殺して殺して殺しまくりました。

 桃太郎は自らの拳や刃物を使いました。ケルベロスは牙で頸動脈を食い破りました。キジGUYはくちばしで人間の目玉をえぐりとりました。

 サルトルは頭を使い、大量の人間を保健所の殺処分用スペースに送り込んでガスのスイッチを押しました。漏れ聞こえてくる断末魔の悲鳴を聞いて、「やっぱり安楽死というのは嘘だったんだな」とサルトルは思いました。

 島の人口は数百人ほどでしたが、その日一日で人間は残らず掃討されました。

 夕陽が沈む中、1人と3匹は真っ赤な夕焼けに照らされていました。全身に浴びた返り血の色が目立たないほどの真っ赤な夕陽でした。

 サルトルがふと訪ねました。「ところであんたは何者なんだい?」

「俺かい? 俺は、桃から生まれた桃太郎よ」